民族時報 第849号(98.4.11)


 

 資料

 

 貧困の世界化(2)

 

 マクロ経済的な改革

 先で少し言及したが、この本は主に途上国の経験に焦点を当てて考察した。しかし一九八九年にベルリンの壁が崩れて旧ソ連が解体しながら、世界経済の構造調整の過程はまた別の様相を見せている。マクロ経済的政策に対する「政治的合意」がなし遂げられ、全世界的に各国政府が声を合わせて新自由主義政策の議題を採択している。九〇年代に入って、経済協力開発機構(OECD)の国家が採択したマクロ経済的改革は、過去に第三世界と東ヨーロッパに適用された「構造調整計画」の核心的な内容をほとんど大部分含んでいる。

 しかし、これらOECD国家の制度的状況は、この本に叙述されている途上国のそれとは違う。具体的に、先進国ではブレトンウッズ機関などが「政策監督」と関連した重要な役割をしない。西ヨーロッパの債権者らはワシントンにある本部の仲裁を経ることなく、直接に該当国家の政府に圧力を行使する傾向がある。また準国営企業、公共サービスの事業体や中央および地方政府の債務は、金融市場(例えばムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ=S&Bのような信用評価会社の信用等級)によって精密に分類され、「等級」が付けられる。それだけでなく、一国の財務長官が巨大投資会社と商業銀行に債務状況を報告することが、ますます慣行化されている。

 一九九五年にムーディーズ社がスウェーデンの国家外債等級を下向きに評価するや、当時の少数派であった社会民主党政府は、児童手当てと失業保険給付を含む、政府の中心的な社会福祉計画を縮小するという決定を下した。同じようにムーディーズ社のカナダ公共外債に対する信用等級評価は、カナダが公務員の大量削減と社会保障計画の大幅縮小を骨子とする、一九九五年、九六年の構造調整計画を採択することになった主たる要因となった。米国でも一九九五年、ウォ−ル街で提案した有名な「均衡予算改正案」が上院で僅差で否決されたが、仮に通過していたならば、米国憲法に国家に対する債権者らの権利を明文化することになっただろう。

 八〇年代に入って、OECD国家の公共外債は途方もなく増加した(一九九五年現在、十三兆ドルを超える)。皮肉にも「世界的な外債償還」過程それ自体が、新たな外債を体系的に発生させて、拡大していったのである。世界最大の債務国である米国も、レーガン―ブッシュ政権の時期に公共外債が五倍も増加し、一九九六年には五兆ドルにのぼった。さらに西ヨーロッパ国家の膨大な公共外債が累積されながら、これがまた金融界に政府の経済・社会的政策を干渉することのできる権力と「政治的手段」を提供する契機となった。

 全世界的な独占

 不況が深まりながら、世界経済は少数の国際銀行と全世界的な独占企業によって左右されている。この強大な産業・金融界の利害関係者らは、次第に市民社会の利害と衝突している。アングロサクソンの自由主義精神は「競争の促進」を基盤としているのに比べ、厳格な通貨と財政統制を根幹とするG7国家のマクロ経済的政策は、実際に中小企業の計画的な倒産だけでなく企業間の合併を助長している。

 そして巨大な多国籍企業は、代表的には米国とカナダでフランチャイズ企業体系を利用して、(とくにサービス産業部門で)地域市場を直接に掌握してきた。この過程で小規模の企業は根元から引き抜かれたり、そうでなければ、いわゆる加盟店(フランチャイジ)という形態で世界流通網の中に編入され、大企業(フランチャイザー)は広範な人的資本と企業運営権を掌握することができた。さらに投資費用の大部分を個別の生産者が負担するようになりながら、小企業や卸業体の収入の相当部分が大企業に流れ込んでいった。

 これと似たような過程が西ヨーロッパでも展開された。いわばマーストリヒト条約の締結以後、ヨーロッパ連合の政治的再編過程は、ヨーロッパ各国間の社会的統合に進むことなく、金融界の支配的利害関係を代弁する式に進んだ。この体系では、国家権力が私的独占体の過程―大資本がさまざまな形態で小資本を蚕食する過程―を計画的に支援する。

 このようにヨーロッパと北米に経済ブロックが形成されながら、地域と地方の企業は基盤を失い、小規模の自営業は姿をくらまし、都市の生活様式も変ぼうしている。「自由貿易」と経済統合は世界的企業のより一層の活発な移動を保障するが、地方の小資本移動は(非関税と制度的な壁を通して)制約を受けている。世界的企業が主導する「経済統合」は、うわべは政治的統合を掲げているが、国家間あるいは一国内の社会的葛藤(かっとう)と分裂主義を助長するのが常だ。

 金融不安

 マクロ経済的改革の衝撃で「実物経済」が崩壊されながら、これはまた世界金融体制を極度に不安定化させる要因として作用した。一九八七年十月十九日の「ブラック・マンデー」―専門家らはこの日、ニューヨーク証券市場が総体的崩壊をまさに目前にしていたと評価している―以後、世界金融体制には高度に流動的なパターンが定着するようになったといえる。機関投資家らの「株価差益の取得」と、突然の離脱で事態が悪化したメキシコやバンコク、カイロ、ボンベイのような新しい「周辺部金融市場」の崩壊まで論議する必要もなく、主要な証券取引所がすべてその頻度と幅が徐々に大きくなる株価の上昇・下落現象に苦しめられている点と、東ヨーロッパとラテンアメリカの国家などの通貨が大きく傷ついた点が、これを反証している。このようにして、周辺部の証券市場は途上国の余剰を受け取る新たな手段となっているのだ。

 世界金融の環境もやはり、新しく変ぼうした。八〇年代後半から起きはじめた企業合併の波は、マーチャントバンク(引き受け商社、発行商社)と機関投資家、証券会社と大規模保険会社の周辺に密集している新世代金融業者らが、自らの影響力を強固にすることのできる道を開いてやった。そしてこの過程で、商業銀行の機能は投資銀行や証券会社の機能と違わなくなった。

 こうした「資金管理人」らは、金融市場では強大な影響力を行使しているが、実物経済で企業家が担当しなくてはならない役割は徐々に縮小されている。国家規制からはずれたこの資金管理人らの活動には、商品先物取り引きと関連する投機性取り引きや、通貨市場の操作も含まれている。マネー・ロンダリング行為と海外の金融安全地帯にある(富裕な顧客の相談を主な業務とする)「民間銀行」の繁盛を言及しなくても、主要金融業者の日常的活動のひとつは、ラテンアメリカと東南アジアの「新たな市場」に「ホットマネー」を「預ける」ことだ。現在、一日の外国為替取り引き規模は一兆ドルに達するが、この中で実質的な商品貿易と資本移動に関連するのは一五%にしかならない。

 このような世界金融取り引きでは、資金移動がコンピューター取り引きという無形の形態で、この銀行からあの銀行に高速処理される。その結果、「合法的」企業活動と「不法的」企業活動はより一層緊密に相互連関性を持つようになり、報告されない膨大な規模の個人財産が蓄積されるのだ。また構造調整計画と金融市場の脱規制化で恩恵をこうむるマフィア組織が国際金融界で占める比重もまた徐々に大きくなっている。一部の途上国では、政府がこのような犯罪組織の信託統治下に置かれているのであり、犯罪組織は世界銀行が進めた民営化政策で、国家財産の相当部分を握ることができた。ペルー、ボリビア、旧ソ連に対する分析(第十、十一、十二章)で、マクロ経済的政策とマフィア組織の地下資金のマネー・ロンダリングとの連関性が明らかになるだろう。

 (つづく)

 


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