民族時報 第1193号(10.11.15)


【資料】韓統連の指令は「ねつ造」

   「国家の犯罪を再審でたださなければ」


 「在日同胞留学生金整司スパイでっち上げ事件」について真実・和解のための過去事整理委員会が昨年末、政府当局のねつ造事件と決定したことを受けて、金整司氏は裁判所に再審請求した。これに関連して、国内紙「ハンギョレ新聞」(十月十四日付)が金整司氏のインタビュー記事を掲載した。全文を紹介する。



 一九七二年、生まれて初めて韓国を訪れた十七歳の在日同胞青年の目にうつったソウルは日本よりかなり劣っていた。しかし、この経験ははじめて彼の民族意識をめざめさせた。朝鮮人差別を避け、日本人のように生きることを望んだ両親が特に教えてくれなかった韓国語をすすんで学び、韓国関連の書籍を読みはじめた。そのなかで最も大きな衝撃は金芝河氏の詩集であった。「こんなに立派な詩人を監獄に閉じ込めた独裁政権を理解できなかったんですよ」。

 七七年に早稲田大学に合格し、東大にも一次合格したが、彼はソウル大を選択した。韓国にとにかく来たかったからだった。しかし入学直後、彼は国軍保安司令部に連行され、ひどい拷問を受け、「韓国民主回復統一促進国民会議(韓民統)の指令を受けて軍事機密などを収集した」として、国家保安法違反容疑(スパイ、鼓舞・称賛)で無期懲役を宣告された。またこの事件で初めて韓民統を反国家団体と規定した軍事政権は、八〇年の「金大中内乱陰謀事件」当時、金大中前大統領に韓民統議長として活動したとの理由で死刑を宣告した。

 十二日午後、ソウル市麻浦区のソウルガーデンホテルで会った金整司氏(五十五歳)は「人の人生を壊しておいて……、国家が犯した犯罪だから再審や無罪判決は当然でしょう」と力をこめて語った。

 七九年八月、刑執行停止で釈放された後、日本に帰っていた彼は昨年十一月、「在日同胞留学生金整司スパイ事件」が国防部過去事真相究明委員会と真実・和解のための過去事整理委員会から「ねつ造だとの決定」を受けて、一月に裁判所に再審を申請した。

 彼は八月、「在日韓国人良心囚の再審無罪と原状回復をかち取る集い」を結成し、スパイねつ造事件の被害者である在日同胞政治犯の再審と日本での法的地位の安定化のための活動を進める計画だ。「日本で生まれ、本来は特別永住者だったのに『国家保安法の前科』のために一般永住者にかえられ、日本への再入国のたびに指紋も押さなければならないなど、生活に支障が多い」と、彼は言う。そして在日韓国人政治犯を救援する家族・僑胞の会で調査した結果、七一年から九三年にスパイ容疑で投獄された在日同胞政治犯が百六十人にもなると語った。金氏は「当時、苦痛を受けた在日同胞のなかにはいまだに拷問される夢をみて、そのときの恐怖のために今まで立ち上がることができず、平安に暮らせないものが大多数」だと語った。

 拷問の後遺症で両足が不自由な金氏は「拷問された人々は困難な人生なのに、拷問したものは今も普通に暮らしながら拷問の事実さえ否定している」とし、もどかしさをあらわした。それにもかかわらず、彼の母国愛は変わらなかった。「独裁政権が悪かっただけで、韓国を嫌うとか憎むとかはしなかったんですよ。むしろ民主化や統一がどれほど重要なのか、分かるようになったのですから」

 ハンギョレ新聞(十月十四日付)


[HOME] [MENU] [バックナンバー]