民族時報 第1151号(09.01.01)


【新春インタビュー】オバマ当選は米国の転換の兆し/日本では戦前的な反動化強まる

          拉致問題は日朝正常化で解決を/朝鮮半島と日本の新時代を築く

    福島みずほ社会民主党党首に聞く

 本紙は社会民主党の福島みずほ党首にインタビューした。福島党首は、一九五五年宮崎県生まれ。東京大学法学部を卒業後、弁護士として、ドメスティック・バイオレンス、選択的夫婦別姓制度や婚外子差別、外国人差別、セクシャルハラスメントなどの問題に取り組み、在日韓国人の日本軍「慰安婦」宋神道さんの裁判などにも取り組んだ。一九九八年に参議院議員(全国比例区)に初当選し、ドメスティック・バイオレンス防止法・改正法と児童虐待防止法の制定、女性の人権問題、有事立法反対と平和問題、盗聴法廃止、ワーキングプア、外国人の人権擁護など、国会内外で幅広く活躍しており、韓国の政治家や民主人士らとの関係も深い。現在、学習院女子大学の客員教授でもある。国会では、平和、雇用、環境、人権、女性の五本柱で活躍中。インタビューは昨年十二月五日、金知栄・論説委員が社会民主党本部で行った。(整理は本紙編集局。文責は編集局にある)

■憂慮される日本の状況

 ―米国が、北朝鮮に対する「テロ支援国家指定」を解除し、朝米関係が敵対関係から共存関係へと転換しようとしています。一方、日本政府は北朝鮮への経済制裁を延長し、在日同胞への人権弾圧を強め、政治・社会状況はむしろ保守化しています。こうした日本の状況をどのように考え、社会民主党としてはどのように対応していかれるのでしょうか?


 「まさにおっしゃるとおりだと思います。ただ、ちょうどオバマ氏が大統領に当選したとき、沖縄にいたのですが、オバマ大統領になったからといって、すぐに米軍基地が縮小するとか、新たな展開になるとは思えませんので、そうした部分ではオバマ政権に過剰に期待するのではなく、注視していかなければならないでしょう。ただ、多くの米国民が、『もう戦争はコリゴリだ』、あるいは『格差や貧困が拡大する社会はいやだ』と考えていたと思います。ですから、米国社会である種のパラダイム(枠組み)転換が起きはじめているのだろうと思います。もちろん、オバマ氏自身がイラクからの撤退を言いながらも、アフガニスタンにはさらに深く介入するとなると、どのようになるのか。インド洋での自衛隊の補給活動を継続しようとしている日本に対して、さらなる協力が要求される可能性もあります。一方で、自然エネルギーの促進や、原子力発電所をこれ以上増設しない、地球の温暖化防止など、社民党との共通の課題も多いです。世界が大きく変わる中で、しかし、日本の政治がなかなか変わろうとしない。日本社会では、冷戦時代の思考が深く染みついており、ポスト冷戦に向けてのコンセンサスはできていません。さらに、戦前の植民地支配や侵略行為を肯定的にとらえる思想が払拭されていません」

 「田母神論文、戦後補償問題、『従軍慰安婦』問題や、国籍法の改正で出てきた問題もそうですが、日本のある種の反動化や人権意識の希薄さというものが、むしろ強くなっているかもしれないですね。田母神論文問題では、自衛隊がシビリアンコントロールをできていないという問題と、政府自身が責任を持ってシビリアンコントロールをやり遂げていないという二つの点を明確にさせたと思います。村山談話や日本国憲法を踏みにじる発言を、自衛隊のトップがしているということに、非常な危機感を感じています。ですから社民党は、自衛隊の中の教育のあり方も含めて、検討していきたいと思っています」

 「社民党は、政治を変えることと、政治によって社会を変えるという二点をやっていこうと思っています。また、『村山談話』をきちんと踏まえて、近隣諸国との関係をつくり上げていくべきだと考えています」

 「政治をどのように変えるかですが、今年は必ず衆議院選挙があるだろうと思います。その中で平和と社会民主主義を実現する社民党として勝利し、新しい政治の品質を保証するような役割を果していきたいと思っています」

 ―昨年十一月に日本軍『慰安婦』アジア連帯会議がありましたが、日本政府と国会に対して、公式謝罪と賠償実現のための行政と立法制度の整備、再発防止のための歴史教科書記載などを要求しました。『慰安婦』問題解決の展望についてお聞かせください。

 「国際人権規約B規約の勧告が昨年の十月末に出て、そのなかには『慰安婦』問題の言及もありました。教育をしっかりと行うことや、否定するような発言についてもきちんと対応すべきということと、補償も含めて勧告が出たということを重く受け止めています。『慰安婦』の問題に関しては、今まで野党共同で『性奴隷制』の問題についての立法を出してはいるんですが、まだ十分な審議、あるいは成立、可決の見通しが参議院ですら、残念ながらありません。ですが、ご存じのとおり参議院では与野党が逆転し、衆議院でも与野党逆転の可能性が十分にあり、せっかく野党で力を合わせてやってきていることなので、国会の中では立法を目指してがんばっていきたいと思っています」

■非核化と安全保障構想

 ―世界平和のために努力してきた社会民主党の朝鮮半島政策がどういうものなのか、そして、その実現のためにどんな活動をしているのかをお聞かせください。

 「土井たか子前党首のときに、社民党は北東アジアにおける安全保障構想、いわゆる『土井ドクトリン』を発表しました。これは北東アジアにおける非核化と安全保障構想の考え方を明確に打ち出したものです。このなかには、朝鮮半島の非核化も入っています。六者協議の議長の武大偉氏が社民党に来られた時に、『社民党の安全保障構想を六者協議の決議に生かしました』とおっしゃられたことが、とても心強かったです。やはり社民党は、北東アジアが安定すること、非核化していくこと、そのなかでの安全保障がきちんととられていくことが、本当に大切だと思っていますし、そのことが六者協議の決議に結実していたわけです。ですから、これからも北東アジアにおける安全保障構想、非核化構想をこれからも強く訴えていきたいと思っています」

 「日朝の関係改善は、なかなか進んでいません。それどころか、今は後退し、停滞している状況が続いています。日本は小泉総理のときに、日朝ピョンヤン宣言に合意しています。したがって、基本的にピョンヤン宣言に基づいてさまざまな問題を解決すべきだし、一九九五年の村山談話の流れのなかで、問題を解決すべきだと考えています」

 「社民党は社会主義インターに所属していて、昨年の七月にもギリシャで社会主義インターの世界大会に参加しました。そこで、アジアのさまざまな社会民主主義政党との交流もおこないましたし、二〇〇一年には、インターのアジア太平洋委員会を主催しました。やはり社民党としては、この地域での平和の実現を人権問題と合わせて、他国の政党とともに果たしていきたいと考えています」

 「朝鮮半島が平和であること、三十八度線をはさんで緊張を続けて対立することよりも、往来と交流がおこなわれ、平和協定によって対立のレベルを引き下げることのほうが、ずっと社会的負担が少ないと思いますし、平和や和解に向けて交流が促進されるよう期待しています。朝鮮半島の緊張と日本における平和憲法の動向というものが、実は密接にリンクをしていて、北東アジアにおける緊張関係が高まると、やはり日本も『憲法を改正すべき』だという意見が強まりますから、心から朝鮮半島における和平交渉や交流、緊張緩和が進むような活動を行っていきたいと思っています」

 「六者協議もやはりテーブルについて話し合いが進むことを歓迎していますし、武大偉議長が発言したように、六者協議が進めようとしている話し合いによる問題解決や、北東アジアにおける安全保障の考え方、朝鮮半島の非核化の問題は、社民党と共通していると思うんです。日朝の国交正常化交渉もその中で、また日朝ピョンヤン宣言の延長線上で推進すべきと思っています」

 ―日本は六者協議の構成国でありながら、エネルギー支援の分担を拒否しています。このままでは、日本だけが国際社会で取り残されるんじゃないかと思います。これから、六者協議と朝米関係の改善がより進んでいけば、日本としてもいい機会だと思うのですが。

 「朝鮮半島における非核化の問題と拉致問題の両方を解決すべきです。特に日本国民にとって、拉致問題は大きな課題です。六者協議を通じて日朝関係の正常化を進展させるべきです。日朝ピョンヤン宣言では、『経済協力』ということで、補償問題も実質的に解決をはかることになっています。これを誠実に履行しなくてはなりません。また、六者協議においてもう少し日本がイニシアティブを発揮すべきだと考えています」

■世論とずれる国会状況

 ―国会の中の雰囲気はどうでしょうか?

 「もう少し日本の国会の中で、平和に向かってどのように進んでいくのかという気運を強めなければならないと思います。この十年間を振り返ると、日米新ガイドライン―周辺事態法や有事立法ができ、防衛庁が省に昇格し、在日米軍再編促進法や国民投票法、教育基本法の改悪など、憲法を改悪していこうという動きは、日本の国会のなかでとても強まった十年だと考えています。そうしたなかで、憲法九条を守ろうという動きは、市民運動のなかではとても強くなっており、国民のなかには、憲法九条を変えるべきでないという人は増えています。しかし、逆に国会の中は、憲法を変えるべきという人が圧倒的に多く、国会の中を変えていく必要があると考えています。人々の力でそのギャップを変えていくことがとても重要だと思います」

 「憲法審査会を動かして憲法を改悪しようという人たちが、与野党を問わずいます。田母神氏が自衛隊の中でおこなっていた教育や、防衛大学での教育もそうですが、人権や平和、日本国憲法の考え方を取り入れなければならないし、これからもっとがんばらなければならないと思います」

 ―韓国の国会議員との交流や連携は?

 「さまざまな点で、国会議員の皆さん、これは韓国だけに限らず、アジア各国の大使の皆さんや、各国の議員の皆さん、もちろん韓国の議員の皆さんとも交流はあります。今まで韓国の国会議員とは、戦後補償問題や非正規雇用の問題、男女平等の問題など、歴史認識だけでなくさまざまなテーマで交流しています。また、ウリ党(現民主党)や民主労働党など、野党の議員だけでなく、与党のハンナラ党の方たちとも交流があり、ハンナラ党の議員の方々も社会民主党を訪ねてこられます」

 「韓国の国会議員の方たちは、与党であれ野党であれ、北東アジアの平和の問題や日本の軍国主義化に反対するという、社民党と共通した考えの方がとても多いように思いますね。ですから、韓国の国会議員の方々が各党を回って社民党に来ると、『ホッとする』みたいなことをおっしゃいます(笑)。私も訪韓すると、非正規雇用センターに行ったり、ウリ党の本部を訪問したり、民主労総と韓国労総をそれぞれ訪問したりと、政党レベルやNGOレベル、草の根レベルや、国会議員の方たちと交流を深めています」

 ―北朝鮮の政党などとの交流再開に向けての展望は?

 「一九九九年に超党派で訪問したのが最後で、その後、南北首脳会談もあってかなり良い方向に向かいました。社民党も社会主義インターの加盟党とともに、南北双方を訪問しようかという議論もあったんですが、その後、拉致問題などで訪問できる状況ではなくなり、今日まで事態は改善されないままという状況です。朝鮮総連の方たちからは、日本国内の問題についてはさまざまな相談や、要請を受けたりもします。つい最近も、新宿での朝鮮商工会強制捜査問題などで日本政府に抗議をしたいということで、社民党の議員が協力して取り次ぎを行なったりしています」

 「先ほども言いましたが、国際人権規約B規約が、朝鮮学校に対する税制の問題や、いろんな人権問題について勧告していますよね。ですから社民党としては、もちろん外交という点もさることながら、日本の国内における人権問題、日本における外国人学校の問題や、差別の問題など、まだまだ取り組みの弱い部分があるので、そうした問題をきちんとやっていきたいと思っています」

「とにかく社民党としては、衆議院選挙に勝って、緊張緩和と平和、憲法九条の維持、日朝国交正常化も含めてきちんとやっていくべきという考え方を広めていきたいと思っています。ご存じのとおり、国会で決議した経済制裁については、社民党は反対していますが、残念ながら自公政権はそうではないですからね」

■冷戦構造の終結に努力

 ―私たちは今、現在の北東アジア情勢が統一・平和・和解に向かって大きく動いており、特に、朝鮮半島の統一は迫っていると見ています。また来年二〇一〇年は、韓国併合から百年となり、その契機性を生かし、日本政府が過去の歴史を清算し、誤った朝鮮半島政策を是正し、日本と朝鮮半島の新しい時代をわたしたちがともに作っていきたいと思っています。それに対する福島党首の考えを聞かせてください。

 「北東アジアでの緊張が高まることは、日本にとっても本当によくなく、そうなるとダイレクトに排外主義が煽られ、日本にいる韓国・朝鮮の人たちも、どんどん住みづらくなっていくと思うので、これについては、新しい世紀になって新しい時代を切り開くべく社民党としては、努力していくつもりです。やはり教育はすごく重要だと思います。最近、あらためてドイツの教科書を見ると、現代史がすごく分厚いんですよね。日本では、若い人たちが、歴史がわからないとか、日本にいる韓国・朝鮮の人たちの状況がわからないということが起きています。やはり教育や、歴史認識でも政治の部分でがんばっていきたいと思っています」

「そして、朝鮮半島の統一、平和、和解が進むようにと願っています」

 ―私たちは、日本政府の誤った朝鮮半島政策を是正させ、お互いに友好関係をつくり、朝鮮半島と日本の新しい時代をつくりたいと思っています。

 「冷戦構造をできるだけ早く終わらせるということが、今、本当に重要な課題です。ヨーロッパでは、十七、八年前に冷戦が終わり、中国と台湾もいろいろありながらも、対話が進んでいます。日本は朝鮮半島に対して歴史的な経緯があるわけですから、冷戦構造を終わらせるために日本が動かなければいけないわけで、それをよそから言われてやるというのは非常に恥ずかしい話だと思います」

 「世界中で唯一冷戦構造を残してしまって、それを利用されているというと言葉が悪いかもしれませんが、冷戦構造を変えたくないという力学もあるように思います。ですから、今のアメリカの動きを見ると、日本が非常に内向きになっている間に、世界のパラダイムが転換し始めていると思いますよね」

 「韓統連の皆さんたちは統一・平和・和解を心から願っているにもかかわらず、つい最近まで韓国に行けませんでした。しかし二〇〇三年に訪問も実現し、韓国でも国家保安法を廃止するという動きが一時期強まりました」

 「私は、『慰安婦』として名乗り出た金学順さんに一九九一年の夏にはじめて会いました。その前に証言をした人も実はいたんですが。その後、何十人という女性たちと会い、戦後補償のテーマを弁護士としてやってきましたし、在日韓国人の宋神道さんの裁判も多くの弁護士らとやってきたんですが、二十年近く経っているにもかかわらず、まだ政治が大きく変わっていない。関連する法案もあるので、それを大きく進めたいんですけどね」

 「でもオーストラリアが労働党政権になってマイノリティに対する謝罪をし、それでオーストラリアの社会も大きく変わり、むしろそういったことを抜本的におこなうことで、オーストラリア労働党の支持率も上がるわけです」

 ―本当に、日本政府も早くそのように変わってほしいと思います。

 「私は、やむをえず故郷の地を離れ、日本で生活をすることになった在日コリアンの皆さんが、その才能を生かして暮らせるような社会にしなければいけないと考えています。外国人が暮らしやすい社会は、自国の人たちにとっても暮らしやすい社会であることは、他国の例を見れば明らかです」

 「二〇〇九年が韓統連の皆さんにとって、良い年となることを心から願っています。社民党もきたるべき総選挙で勝利し、もっともっと発言の場を広げていき、私たちの政策を実現させていきたいと思います」 

 ―今日は、お忙しいなか、本当にありがとうございました。


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