民族時報 第1149号(08.12.01)


【解説】南北関係が全面遮断の危機/際立つ韓日政府の消極姿勢

    南北関係の緊張と6者首席会合の開催

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の南北将官級軍事会談北側代表団団長は十一月二十四日、南側に対して「軍事境界線を通過する陸路通行に関する重大措置」(第一段階)を通告した。それによると、@開城工業団地と金剛山観光地区の政府関係者と企業の常駐者および車両を選別追放し、軍事境界線陸路通過を遮断するA開城観光を全面遮断するB南北鉄道の列車運行を不許可とし、軍事境界線を再び封鎖する――などとなっている。この措置が第一段階とされていることから、事態の推移によっては、開城工業団地の操業中断―閉鎖にまで状況が悪化する可能性がある。

 この問題の本質を象徴するのが、李明博大統領の訪米中の発言だ。李大統領は十六日、特派員懇談会で「自由民主主義体制で統一するのが最終目標」と述べた。これは「わが民族同士」で和解と交流・協力を進展させて平和統一を実現するという六・一五共同宣言と十・四宣言の精神を否定して、吸収統一の「宣戦布告」をしたことに等しい。

 南北関係がこれほど緊張し、悪化したのは、一九九四年に金日成主席の急死直後に、金泳三大統領(当時)が韓国軍に非常警戒令を発動して以来のことだ。

 朝鮮半島の軍事的緊張を高めてきた根本的な要因は、分断を維持するために「北の脅威」を誇張してきた米国の朝鮮半島政策にあり、その本質は民族の自主権に対する敵視政策だった。しかし、ブッシュ政権が北朝鮮に対する「テロ支援国」指定を解除するなど、敵視政策から平和共存政策に転換することで、六・一五共同宣言と十・四宣言にもとづいて南北関係を飛躍的に進展させる条件が生まれた。それにもかかわらず、李政権は対北対決政策に固執し、日本政府と足並みをそろえて、状況を悪化させている。

 こうしたなかで、朝鮮半島の非核化のための六者協議の首席代表会合が八日から、北京で開かれることになった。七月の協議以来、五か月ぶりのことだ。

 今回の首席代表会合の開催は、ブッシュ米大統領自身が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でペルーに集まった関係国の首脳に根回しを行うなど、米国の積極姿勢が目立つ一方、韓国と日本が「検証」問題を口実にして、開催そのものに反対するかのような態度を見せたことは記憶されてよいだろう。

 開催決定に至るまでの米国と韓国・日本のギクシャクぶりを見ながら、北朝鮮は「検証」問題について釘をさした。

 北朝鮮は十一月十二日、外務省スポークスマン談話で、十月一日から三日まで米国のヒル国務次官補(六者協議首席代表)が訪朝した際の検証問題に関する朝米の合意事項を明らかにした。それによると朝米は、@北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)から脱退していること、六者協議は現在、核廃棄の第二段階にあることを確認したA検証対象は寧辺の核施設で、検証方法は現場訪問、文書確認、技術者とのインタビューに限定され、検証時期はエネルギー支援完了後となる――という。そのうえで談話は、朝米が交戦状態にあるなかで「国際的基準」の適用に固執して朝米間の合意以上になにかを求めても無駄であること、エネルギー支援の遅れは、核施設の無能力化の遅れを招くだけでなく、六者協議の前途を危うくすると警告した。同様の立場表明は、首席代表協議の開催が明らかになった二十四日にも、反復された。

 以上の過程から明らかなように、今回の六者協議首席代表会合の焦点は第一に、十月の朝米間の合意を六者協議の合意として確認することであり、第二に、日本政府が「拉致問題に進展がない」として、大幅に遅れる原因をつくっている北朝鮮に対するエネルギー支援のメドをつけることであり、第三に、六者協議の合意事項である朝米と朝日の国交正常化交渉問題、外相会談の開催問題など、朝鮮半島全体の非核化、平和体制の構築問題にどの程度の道筋をつけるかにある。

 ペルーでのAPECに参加した韓米中日の四か国首脳は、検証方法の文書化をめざす方針を確認した。中国の胡錦濤国家主席は二十三日、ロシアのメドベージェフ大統領と会談し、協力を強めることで一致した。胡主席は、「(非核化)第二段階の措置を全面的に実施し、新段階に進むべきだ」と一歩踏み込む発言をした。

 一方、韓国と日本は、核計画検証問題で争点となっているサンプル(試料)採取に固執する姿勢を変えていない。とはいえ、米国側はこの問題について、朝米間で明確な理解があり実施は可能と繰り返し説明している。したがって、首席代表協議で北朝鮮側は試料採取の文書化は拒否するものの、口頭了解などのレベルで、今後の朝米協議次第では採取に応じる余地を残しているとの報道もある。

 米国ではブッシュ政権からオバマ政権への交替があり、南北関係はかつてなく緊張しており、日本の政局は混迷を極めている。六者協議首席代表会合は、こうした複雑な情勢のなかで開催される。その帰すうが注目される。

(高雄埴記者)


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