民族時報 第1149号(08.12.01)


【焦点】自衛隊、統合幕僚学校でなどで

    危険な侵略史観流布

 「我が国が侵略国家だったなどというのは正(まさ)に濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)である」とした「論文」を応募し、田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長が、更迭され「定年退職」になった問題と関連し、自衛隊の幹部を育成する学校や、防衛大学などで過去の侵略戦争を正当化する「教育」が行われていることが明らかになった。

 田母神氏が、自衛隊の高級幹部を育成する統合幕僚学校で、同校長を務めていた〇四年に、「歴史観・国家観」などの講座を新設、「昭和の戦争」や「現憲法及び教育基本法の問題点」をテーマに「大東亜戦争史観」「東京裁判の本質」などの講義を行っていたことが、十一月十一日の参院外交防衛委員会で明らかになった。このカリキュラムの「教育目標」は「健全な歴史観・国家観を育成」することだとされている。講師には、大学教授や作家などを招いたとされているが、防衛省は肩書きのみで講師名は公表しなかった。

 田母神氏は、〇七年三月、安倍晋三内閣のときに航空幕僚長に任命されたが、その在任中に基地視察など、さまざまな機会で「訓話」や「講話」を行い、「南京大虐殺は誰も見ていない」「(専守防衛について)これからもずっと正しいのか、検討されなければいけない」などと主張していていたことも明らかになった。田母神氏は、侵略戦争を正当化する「歴史観・国家観」を、統合幕僚学校や自衛隊において、職務権限として「教育」していたのだ。

 こうした問題は、田母神氏だけの個人的な問題ではない。

 十一月六日には、自衛隊の海上幕僚幹部が作成した一般隊員・幹部向けの精神教育参考資料に、「敗戦を契機に、わが国民は自信を失い、愛国心を口にすることはおろか、これをタブーとし、賎民意識のとりこにさえなった」との表現があることがわかった。

 また防衛大学で必修科目になっている「防衛学概論」で使用される教科書「防衛学入門」に、第二次世界大戦を「大東亜戦争」と表記、「戦争原因は欧米列強によるアジア侵略からの自衛を基本とし…」と表記されていることも明らかになった。

 麻生首相は、十一月十一日の田母神氏に対する参考人招致のあと、「言論の自由はある。ただ、文民統制をやっている日本で、幕僚長というしかるべき立場にいる人の発言としては不適切。それがすべて」と語った。侵略を正当化する発言を田母神氏の「言論の自由」と片付け、歴史認識の問題については一切ふれていない。

 今回の問題は、自衛隊における組織的、構造的な問題とあわせて、侵略戦争に対する日本の歴史認識が厳しく問われている問題と言えるだろう。


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