民族時報 第1110号(07.04.01)


【読書案内】女性8人の生と闘い

    『鉄条網に咲いたツルバラ』

パク・ミンナ著 大畑龍次監修

 今年は、一九八七年に韓国全土を揺るがし、韓国民主化の一大分水嶺となった六月民主大抗争と七・八月労働者大闘争から二十周年を迎える。

 八〇年のソウルの春と光州民主化運動を銃剣で圧殺して登場した全斗煥軍部独裁政権が、執権延長のため大統領間接選挙制の憲法を維持するとした。これに学生と市民は全土で「護憲撤廃、独裁打倒」を叫び、一か月にわたって街頭進出し、ついには催涙弾を乱射して弾圧する警察を逆包囲し、大統領直選制改憲をかちとり、軍人政治に決定的な打撃を与えた。

 それに続く、労働者の民主労組建設の闘いはすさまじく、圧制をほしいままにした垂直的な労使関係を、水平的な関係へと変化させた。こうして労働運動は、韓国の社会運動において、在野運動の一部門から、決定的な影響力を行使する独立した主導勢力へと、その地位を不動のものにしていった。

 韓国と日本の、この二十年間の社会変動は、極めて対照的である。韓国においては、多くの犠牲者を出しながら民主化運動が継続された。軍人政権を文民政権にし、社会を確実に民主化した。タブーだった駐韓米軍を問題化し、祖国統一を展望するまでになった。一方、日本は……。もちろん、韓国の民主化運動にも問題が山積している。しかし、韓国と日本の進歩的な社会運動が抱える問題の深刻性には、大きな質的差異があるように思える。

 その違いの一端は、本書の八人の女性民主労働運動家のライフストーリーに記録されている。あの過酷だった朴正煕政権時代に労働運動をあきらめないこと。その背景には分断に起因する韓国社会のゆがみ、貧しさがある。糞尿を浴びせかけられ、ゴミ捨て場に放置され、連行され、拷問を受け、放り出されても現場にもどる。「労働解放というのは働かないことではなく、楽しく働いてそのなかで幸福を感じられるということ」(本書、第二章の尹惠蓮氏)との信念を実現するために。

 「あのとき、あなたたちがいなかったら……」六月民主大抗争も、七・八月労働者大闘争もなかっただろう。

 闘いとった民主化と民主労組だから、決して手放さない。守り、発展させなければならない、ということなのだ。しかし、二十年という歳月は短くない。すでに民主化はなされ、民主労組は存在している。社会が、青年労働者が、それを消費することだけにきゅうきゅうとしたとき、民主主義も民主労組も腐食し始めるのだ。

 本書を読むと、日本の社会運動の状況を嘆く自分が恥ずかしくなる。在日朝鮮人の闘いの現場は、まさに日本社会なのだから。ツルバラのたくましさと美しさは、わたしたちのひ弱さとみにくさを、気づかせてくれる。

(英)

(発行 同時代社、定価二千五百円)


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