民族時報 第986号(02.10.01)


【記事4】

    都内で小泉訪朝を考えるシンポ

  朝日首脳会談から一週間後の九月二十五日、日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓ネット)は「小泉首相の訪朝をどう見るか?日朝国交正常化を求める緊急シンポジウム」を都内の文京シビックセンターで開いた。宣言の内容やら致事件への関心が高いなか、多くの市民らが参加した。

 シンポジウムでは、前田康博氏(大妻女子大学教授)が国際的な視野からみた朝日首脳会談の成果と課題を分析(下記ー要旨)、北川広和氏(「日韓分析」編集)と渡辺健樹氏(日韓ネット共同代表)が日朝、日韓連帯運動を取り組んできた立場からそれぞれ発言した。

三人のパネラーは、@日本植民地支配の過去清算を重視したピョンヤン宣言を支持するA朝鮮半島や北東アジアの平和などの問題を解決するために、国交正常化が順調に進むよう働きかけるBら致事件を誠意をもって解決するとともに、在日朝鮮人への暴力や嫌がらせを許さない運動が重要――などと指摘した。

 

日朝首脳会談をどう見るか(前田康博・大妻女子大学教授) −要旨

 わたし自身は、今回の小泉訪朝と首脳会談について二〇〇二年のさまざまなエポックメーキングのなかで、大きな結節点をなすものだと考えている。

日朝関係正常化というテーマの本質は、これまでの敵意や不和という最も醜い部分を清算し、和解と友好、共存と共生の関係を作り上げるという極めて崇高な使命感がなければ到達できないものだ。一九四五年から五十七年間、日本と朝鮮半島の関係は、日本の優柔不断な政治や歴代首相の指導性のなさから正しい関係に至らなかった。その大半は日本に責任がある。つまり五十七年間、日本が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対して含むところを持っているがゆえに、国交に至らなかった。

八月三十日に小泉訪朝が発表されたとき、なぜいま、なぜ小泉かと疑問に思った人も意外に多くいたのではないか。小泉首相は就任早々、靖国神社を公人として参拝するほどの人物だから、おおよそ中国や朝鮮などアジア諸国と共存共生する意識などもっておらず、むしろ敵意を見せる勢力の一人であり、朝鮮問題の解決を期待した国民は極めて少なかっただろうと思われる。

その彼がなぜ、いま動いたのか。彼は米国の世界戦略や外交政策に最も忠実な人物だと言われており、彼が独自で日朝関係を打開したとはとうてい思えない。米ブッシュ政権の意向を汲んで動いたということを否定しがたい。

ピョンヤン宣言について言えば、予想外の内容といえる。ら致疑惑がら致事件になったという非常に衝撃的な内容の陰に隠れた形だが、内容を分析すると、小泉首相がもくろんでいたよりも事態は前に進んだように思われる。言いかえると、ブッシュ政権が許容した範囲を超えて前に進んだようだ。これは将来、米国を変質させる内容をもっている。

しかし、小泉訪朝の四日後に発表されたブッシュ・ドクトリンをみると、米国の意に沿わない敵対国へは先制武力攻撃を加え、しかも世界が協調しなくても単独で武力行使すると宣言している。以前の米国は国際協調を前提に、寛容度を持った戦略だったが、ブッシュ政権はそれを捨てて強硬なブッシュ・ドクトリンを発表した。こうした極めて危険なブッシュ政権に対して、金正日総書記ら朝鮮の指導部は、いまこそ南北、日朝を改善すべきだと分析したのではないかと見ている。

日朝ピョンヤン宣言はその結実だ。私たちは、悪い方向に持っていこうとする勢力の動きに負けず、この宣言を大事にし、いい方向に持っていく必要がある。この宣言を過小評価することは、日朝交渉をさらに先延ばしにすることにつながりかねない。確かに今回の拉致事件の事実は衝撃的であり、胸に刺さったトゲのように長くうずくだろう。だが、その時間を縮めることで克服しなければ、長い間の念願であった日朝国交正常化という大きな果実は得られないだろう。小泉首相を好きか嫌いかではなく、彼がピョンヤンを訪れたという九・一七以後の日本の政治を一層元気づかせる国民運動が必要だと思っている。

日本では日朝首脳会談を過小評価しているが、アジア諸国ではこれが日本再生の道だと見ているようだ。つまり日本が朝鮮と和解し、平和関係を作り上げてこそ、日本がアジアのリーダーとしての役割を得ることができるということだ。

最後に、日本の市民は九・一七以降の市民運動を新たに組み立てていく必要があろう。日朝正常化を目指す新たな市民運動の再生を願いたい。


[HOME] [MENU] [バックナンバー]