民族時報 第981号(02.08.01)


【連載】

    公務中には殺してもいい?A

 米軍側の一方的な調査結果に対する遺族と地域住民の反応は、冷ややかだった。「事故車両の先任搭乗者が女の子たちを発見したのは三十メートル手前だった。猛スピードを出していなかったならば、上り道だし十分に車両を止められる距離だ。米軍車両は道路幅より広いので、普段から中央ラインを越えたまま運行していた」。亡くなったミソンさんの父シム・スボさん(四十八歳)は「事故当日も、対向から急に装甲車が飛び出してきたので、これを避けるために道路の端に寄って事故を起こしたのだ」「別の装甲車との衝突を避けるために、子どもたちをひいた可能性も十分にある」と主張した。

 全国約五十の市民・社会団体で構成された「米軍装甲車による女子中学生殺人事件汎国民対策委員会」の金ジョンイル共同委員長も、「米軍の発表内容は一般の常識からして話にならない主張だ」と反論した。金委員長は「まず事故車両が道路幅より大きく、訓練車両を統制するための安全要員を配置しなかった」「さらに米軍がつくった訓練教本をみると、はち合わせた装甲車が交差通行する際は相手が通行優先になっており、少女たちを発見していなくても、相手の装甲車のために事故車両は止まらなければならなかった」と主張した。

 「韓米合同調査」とはいうが、実際の調査を主導し結論を下したのが米軍だという点も、調査結果に対する不信感を高めている。現行の「韓米駐屯軍地位協定」(SOFA)第二十二条三項は、公務執行中に起こった事故に対しては、優先的刑事裁判権を米国当局が持つと規定しているからだ。実際に合同調査に参加した韓国側の関係者は、「事故運転者と話もできない状況で、何の調査ができるのか」「合同調査の現場で主導的に意見を出したり、裁量権を持って調査に参加することはできなかった」と明らかにした。

形だけの合同調査、一方的結論

 事故原因に対する米軍側の発言が変わったことも、遺族の疑惑を買うのに十分である。米第二師団は事故直後、「現場調査に遺族も参加させる」と明らかにした。しかし、米軍は六月十六日に遺族を呼ばないまま現場検証を行ったが、これを知って駆けつけた遺族の強い抗議を受けた。調査結果に対しても、米軍側の説明は一貫性がない。六月十九日の調査結果発表の場で、米第二師団参謀長は事故の責任を問う遺族に「一次的な責任は事故運転者にあったし、部隊の指揮体系にも問題があったと見ている」と明らかにしている。米軍側の過失は認めたわけだ。

 しかし、米軍はいつのまにかこうした立場を変えた。「事故自体は悲劇的だが、米軍のだれもこの責任を負う理由がない」というものだ。米第二師団の広報関係者は「ハンギョレ21」との電話で、「韓米合同調査の結果、シンさんとシムさんの死をもたらした悲劇的な事件について、だれにも過失はないと決定された」とだけ繰り返した。

こうした主張は韓国警察の調査結果とは真っ向から対立する。警察関係者は「事故当時、事故車両は向かい合わせた装甲車と交差して通行することになり、そのために通常の走行位置から少し右に寄らざるをえなかった」「先任搭乗者が運転者に人がいると叫んだが、無線通信をしていた運転者がこれを聞き取れず、事故が起きた」と語った。これにより、管轄の議政府警察署は「運転者の安全義務を規定した道路交通法第四十四条の前方注意を怠った運転者の過失で発生した事件だ」と結論を下し、すでに検察に事件を移管した。

 往復二車線の狭い道路に、道端は草でさえぎられている事故現場付近の住民は「子どもたちを学校に通わせるのが恐ろしい」と口をそろえる。憂慮していた事故が残酷にも現実化して半月が過ぎたが、地域の住民の訴えにも、いまだにこれといった予防対策がとられていない。亡くなったヒョスンさんの父のシン・ヒョンス氏(四十五歳)は、「安全対策も完備し、過失もないというのに、どうして事故が起きるのか」と嘆いた。

 しかし、米軍は「普段から安全対策に万全を期している」と主張を変えない。「米第二師団は地方道路での事故を防止するために、速度制限を強く施行している。装甲車車両の運行時には、常に誘導車両を運行している。危険な状態では先導の誘導車両を停止させることを含めて、誘導に適合した訓練と標準規則を引き続き強調している。すでに超過速度防止装置の設置、小さな子らの歩行を警告する道路標示の設置を(地方自治体に)建議した。また道路幅の拡張と登下校時の子ども保護のために、歩道の設置も建議した」(米第二師団広報関係者)。 (つづく)


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