民族時報 第937号(01.02.21)


【焦点】

 帰化要件緩和と在日同胞ー存在と歴史性を無視

 在日同胞社会で見解を二分してきた「参政権問題」は、韓国政府の強い意向と民団の「運動」によって修正選挙法案が昨年十二月に日本国会に提出されたものの、自民党内の強い反対で難航、継続審議扱いとなっているが、事実上の棚上げ状態だ。

 これに関連して、連立与党では帰化手続きの簡素化を法制化(国籍法改定)する動きが急浮上した。特別永住者を対象にした「日本国籍取得要件の簡素化」を名分に、与党三党は基本方向に合意して議論を進めている。

 連立与党はすでにプロジェクトチームを作って法案検討に入っている。帰化要件の緩和について、@現行制度の許可条件を簡素化するA届け出制に改めるB全員にいったん日本国籍を付与したうえで国籍を選択させる――のいずれかで対応する方針を決め、今国会で法案提出、成立を目指す構えだ。

 「選挙法改定」問題が棚上げ状態のまま「帰化要件緩和」問題が急浮上したのは、自民党内や保守勢力からの「参政権が欲しければ帰化すればよい」との露骨な排外思考がそのまま反映されたからだ。とくに「全員にいったん国籍を付与」の発想は、在日同胞の歴史性を無視したおごり、たかぶりの表れだ。公明党は引き続き「選挙権法案」も同時に成立を目指すとしているが、「参政権取得運動」が「帰化促進」にからめとられた格好になったといえる。

 ここに来て「参政権」問題は大きく旋回し、在日同胞の存在と歴史性は根底からつき崩される危機に直面したといえる。

 植民地支配を通して「一方的に」国土と民族性を奪い、「一方的に」「準日本人」に仕立て、敗戦後も「一方的に」「日本国籍離脱」とし、在日同胞を「一方的に」差別・抑圧してきた日本が今度もまた「参政権運動」を逆手にとって、国籍取得条件の「一方的に」緩和の名で「在日同胞の帰化促進」を打ち出したのだ。

 在日同胞が自由に国籍を選択する権利は原則として保障されるべきだが、日本としては在日同胞の歴史と存在に対する真摯(し)な反省のうえに立った、民族的権利を全面的に認め、保障していく姿勢が求められているのだ。しかしここには植民地支配の反省はおろか、在日同胞の民族的尊厳を奪った歴史性も、在日同胞の血のにじむ差別との闘いと存在性、意志さえ反映していない。

 いまだに日本と在日同胞との歴史性が意図的に清算されていない状況で、「一方的な」帰化条件の緩和策は「国籍選択の自由」概念を超えて、日本政府による約一世紀にわたる「一方的な」振る舞いの踏襲であり、在日同胞の歴史と存在を「一方的に」抹消させることにつながりかねない。

 二十一世紀を迎えて、在日同胞社会は大きな岐路に立っている。在日同胞社会が団結し、民族教育をはじめ民族性を守り、発展させることが求められている。


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