民族時報 第935号(01.02.01)


【資料】

 ブッシュ政権と韓半島ー対韓半島戦略の展望

 月刊誌「マル」(二月号)は、「ブッシュ政権と韓半島」をテーマに特集記事を掲載した。そのうち、金ミヌン氏(在米ジャーナリスト)が寄稿した「対韓半島戦略の展望」を全文紹介する。

 米CIAの支援のもとで作成された「世界情勢(グローバルトレンド)二〇一五」と題する情勢報告書は、いま全世界的に進んでいる世界化が現在のようなすう勢で進むかぎり、十五年後の二〇一五年になれば世界的な貧富格差がさらに拡大するだろうと展望した。報告書はまた、このような現実が国際的な不安定と葛藤(かっとう)を増幅し、新自由主義的世界化を主導している米国に対する反発を地球の各地で発生させ、米国自身の安保にも深刻な脅威を招くだろうと診断している。

軍事路線を強めるブッシュ政権

 報告書は結局、ロシアと中国の結束、欧州連合の結集力強化など、米国の覇権に対抗する地域的な連帯が作られ、いわゆる対米国の「地理戦略的連帯」が組まれるだろうと展望する。このような現実は、実に米国の覇権的指導力に対する重大な脅威になるだろうと報告書は指摘するが、これはブッシュ政権の今後の外交政策の樹立とその推進にも大きな影響を与えることになる項目だといえる。

 ここでわれわれが注目するのは、米国がこのような葛藤と危機が自国の覇権主義的世界化戦略に起因している点は見ないで、その結果に対する強硬対応にだけ傾いている点だ。実際に世界的な葛藤と対立をさらに深める方向へと米国の政策がつっ走る危険があるという点で、憂慮せざるをえない状況である。結局この報告書によれば、米国の世界戦略は、自国の覇権的地位を維持・強化するため、いっそう強化された軍事主義路線を軸に展開されるだろうと展望される。

 ブッシュ政権の対韓半島政策もやはり、このような世界戦略の枠のなかで進められるだろう。すなわち、韓半島全体の自主的な行動半径を圧迫し、対中国・ロシア連合戦線の結成に対する経済戦略を推進するとみられる。まず南北対話を通じて民主主義的な気流が形成されるのを阻止し、これを土台に韓半島地域に緊張を醸成、増幅することで自らの選択的な介入主義軍事路線を正当化し、中国とロシアの影響力の縮小をねらう戦略をとるだろう。ここにさらにつけ加えると、韓半島全体に対する世界化戦略の安定的拡大を目的とする多国籍資本の総攻勢を支援しながら、とくに韓国市場に対する開放圧迫をさらに強化し、軍事的には対北敵対政策を通して米本土ミサイル防衛(NMD)体制を構築し、東アジア地域の覇権的盟主はまさに米国であることを確実にする戦略を推進するだろう。

 このような状況は、冷戦体制の解体と敵対的な民族分断の終息、韓半島の平和体制樹立と統一基盤の醸成など、重大な課題を前にしているわれわれとしては、非常に深刻な負担と障害が生まれることを意味し、米国のこのような「反動的覇権主義」に対する民族内部の戦略的結集力と意志を強く発揮しなければならない時期であることを教えている。ひと言で言うと、米国はさらに露骨に「韓半島全体に対する政治、経済的隷属化と軍事基地化」を目標とする政策に傾注するだろうとの点で、われわれは自主的な民族大団結の原則による外勢追い出しの対応戦略を、より激しく全面的に展開していく姿勢が切実といえるだろう。

米国経済は戦争を好む

 二〇〇〇年末と二〇〇一年初頭、米国の証券市場は景気沈滞を憂慮した投資萎縮(いしゅく)で真っ逆様に墜落している。

 米国経済、もっとはっきり言うと米国資本主義体制の全般的な景気循環過程が下降線をたどりながら、経済協力開発機構(OECD)は、二〇〇一年も米国経済の成長率が昨年の五・二%から三・五%へと落ち込むだろうとみている。ゴールドマンサックスの場合、三か月前には今年度の成長率を四%としたが、最近二・五%に修正するなど、米国経済の展望に対する自信感が顕著に縮む傾向をみせている。米連邦中央銀行の利子率引き下げが、ある程度の証券市場の浮揚に助けとなったが、以後は継続して後退をくり返しており、米国経済の基本戦略が落ち込むのを防ぐには役不足であることを見せつけた。

 ファイナンシャル・タイムズは一月一日、二〇〇一年の世界経済を展望する社説を通して、一九二〇年代末の景気過熱と好況局面が急に崩れて大恐慌が起きた状況と、一九九〇年代の好況局面を比較しながら、いったい二〇〇一年はどのような状況に直面するかとの問題を提起した。まさに、景気沈滞や恐慌は生産力が急に落ちて経済が塗炭の苦しみに陥る過程で起きるよりは、景気過熱が絶頂にいたる瞬間に破裂するとの点で、この数年間の景気上昇以後、このような事態が展開することはすでに指摘されてきたところだ。

 米国経済の沈滞や下降の反復的な発生と危機は、基本的に米国資本主義体制の構造的な要因だといえる過剰蓄積、すなわち独占資本の位置にいる大資本が富を集中的に所有する過程で、消費者の位置にいる労働者や一般市民の所得水準は相対的に向上できないために生じている。生活に必要な品物が不足して生まれる景気沈滞や貧しさではなく、物はあまりにも豊富に存在しているのに貧困が発生する奇妙な事態が起きているのだ。実に、矛盾にほかならない。生産が急激に拡大しながら景気が過熱するのだが、これを消費できる一般消費者の能力はこれについていけないので、それなりの間隔が広がり、これは独占資本にとってはいわゆる収益率の下落へと帰結する。一般消費者の場合、負債まで背負って生活しているために、消費を維持するのに負担が生まれ、彼らが持つ有効需要の力は日がたつほど落ちるしかなく、資本の立場では収支が合わない景気沈滞が発生するのだ。

 このような点から見ると、景気沈滞は独占資本化された大資本が構造的に自ら招くものだといえる。ここに、米国資本主義の投機的性格まで加味され、証券市場などの資本市場が景気沈滞の兆候に過敏に反応することによって資本の急激な引き上げが起き、この結果、資本循環回路がふさがって、資金が必要な企業が資金を借りられず、金融市場全体の動揺が深まりながら恐慌状態に至るのである。こうした米国資本主義体制の構造的な現実は、利子率の調整や整理解雇のような一時的な対処で応急処置をする。しかし、失業者の量産と貧富格差の深化などが続けば、社会全般にわたる所得水準の下落にともなう市場機能の悪化によって、危機が全面化することもあるという点で、憂慮に値することだ。

米国に盾つくなという者の国籍

 こうした時期に、米国資本主義は自らの経済危機を外部に転嫁しながら解決しようとする動きを見せることもある。利子率の調節や減税政策などで短期的な突破口をつくろうとするが、より広範な景気浮揚に決定的な役割ができるのは、やはり戦争経済の稼働だからだ。一九三〇年代の恐慌解決の決定的な契機が、ニューディール政策よりは第二次世界大戦のぼっ発と戦争経済の浮揚であったとの経験を考えてみることができる。ブッシュ政権の路線が、軍産複合体の利益を強く代弁しようとする側に向かっている点からも、米国が戦争経済の拡大稼働を通した危機克服を選択する可能性は非常に高い。新任国防長官のラムズフェルドが、継続して「スターウォーズ」の復元と米本土ミサイル防衛の再推進に言及する理由も、こうした構造的な選択と無関係ではないのだ。

 ラムズフェルドを中心とする国防チームは、ブッシュ大統領に三月までに米本土ミサイル防衛体系をアラスカに建設し始めれば、遅くとも二〇〇五年までにこれを完成できると勧告した。二〇〇五年という年は、ラムズフェルド国防長官が北韓のミサイルの射程距離が北米大陸まで到達するだろうと予見した時期だという点で、注目を集めている。結局、ブッシュ政権は、北韓にどのようにしてでも口実をつけて、米国の米本土ミサイル防衛体系を樹立しようとの意志を持っていることを明らかにしたわけだ。

 これに対して、ニューヨーク・タイムズは一月初めの社説で、ブッシュ政権の国防チームのこのような構想と勧告案が、まだ技術的な精密性が十分に確認できていない米本土ミサイル防衛推進の危険性をはらんでおり、主要な同盟国との葛藤が深まるかもしれないという点で、慎重を期すよう要求した。それにもかかわらず、ラムズフェルド国防長官を中心にしたブッシュ政権の軍事政策担当チームは、NMD推進に対する強い意志と抱負を持っているとの点で、韓半島は新たな渦の中に巻き込まれる可能性が高い。

 これは、これまでようやく突破してきた冷戦体制の守旧的な保守回帰を意味し、そのことで民族内部の和解と団結、協力体制の伸長が阻止されることを意味する。すでに朝鮮日報とハンナラ党の李会昌総裁ら強硬な守旧勢力は、ブッシュ政権の対北韓政策に対して韓国政府はあれこれ論評するな、感情的にも刺激するな、ブッシュ政権と歩調を合わせろと、いったいどの国のマスコミなのかわからない立場で、米国の強硬路線を支持する論理をはっている。それだけでなく対北敵対政策をさらにあおっている。

 米国の米本土ミサイル防衛樹立の過程で、これを正当化するために、わが民族の生存がどうなるかわからないときに、米国の対北敵対政策の変化を求めるのは当然であり、弱小民族の運命を強大国の軍事主義路線の犠牲にしようとすることに問題を提起するのは必ず必要である。それにもかかわらず、ブッシュ政権の対北敵対政策とこれを基盤にした軍事主義路線についてあれこれ言うなというのは、韓国政府がブッシュ政権の対北強硬路線に何も言わずにおとなしくついていけというのと同じことである。こうした主張と見解は、民族の生命を担保に自らの既得権を守ろうとする民族反逆の姿勢にほかならない。

 民族全体の生存を再び危機に追い込む強大国の軍事主義に対して憤り、これに強く抗議してブレーキをかけることは正当なことである。世界を何回も壊滅できる自分の核兵器は何ら脅威にならないと言う強大国の反人類的な覇権主義こそ、「ならず者国家」の姿にほかならない。

 ノーム・チョムスキーをはじめ米国の進歩的な知識人らは、北韓ではなくまさに米国が世界人類の生命を脅かし、犠牲にする、ならず者国家中の大ならず者国家だと、自国を辛らつに批判している。ばく大な軍産複合体の利益を通じて大資本の利益を得ようとする明白な目的は隠したまま、貧しく小さな国を米国への脅威だと、話にもならない主張を繰り広げながら、強硬軍事路線を志向しようとするブッシュ政権の対韓半島政策は、その本質的な正体が暴露されなければならない。加えて、このようなブッシュ政権の路線と呼応しながら、対北敵対政策に血眼になっている国内の強硬守旧勢力の反民族的な姿勢もまた清算されなければならない。

冷戦勢力清算と民族共同戦略へ

 外勢を背にして民族の生命を圧迫する彼らは、いったいどのような者なのか。民族の平和と生命の価値を無視し、自らの利益のためならば何でもしようとする者らが、権力を握ったり社会的影響力を持つのは、どのようにしてでも防がなければならない。安企部の選挙資金流用事件もよく見れば、冷戦体制の維持で既得権を持つ勢力の清算、冷戦国家と体制の解体という、重要な課題と連関されてこそ意味がある。敵対的な民族分断を支えてきた冷戦体制が育ててきた腐敗政治は、民族経済に対する価値観の不在によって結局、経済破局の原因を提供し、わが民族の力量をこれほどまでに弱化させた。そして、わが民族全体の植民地化を招く米国の政策に協力する勢力を既得権層にしてきたのだ。

 このような現実をこれ以上受け入れてはならない。韓国政治の矛盾と混乱は、まさにこうした勢力の存在と彼らの勢力集結によるものであることを注視して、彼らに対する歴史的な清算をマスコミ改革と政治改革の目標とし、冷戦体制の遺産の清算を通して新しい民族自主の時代を開いていかなければならない。そして、このような目標は、南北の共同繁栄と平和、自主的統一を志向する民族共同戦略を樹立するための努力を求めている。

 


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