民族時報 第868号(98.11.21)


 

 解説

 

 IMF管理下の1年を振り返る(上)

 

 郭 洋春(立教大学助教授)

 

IMF管理下の危機

 IMF管理体制に韓国が陥ってから、一年になる。この間、韓国国内ではIMF管理体制に陥らせた責任者の追及や処罰、IMFとの間で合意した構造調整の実行可否などを巡って、さまざまな議論が展開されてきた。金大中氏が大統領に就任する時、この経済危機を一年半で克服すると公言したが、現在の韓国経済の状況を見ると、あと半年で回復するとは国民のだれも信じていない。そればかりか、事態はますます悪化の様相を呈している。

 先ごろ、「東亜日報」が国内の世論調査機関に依頼して行った「IMF経済危機の国民意識調査」によると、八〇%以上の世帯が昨年より所得収入が減少していると答え、その平均所得減少率は三〇%以上にも上り、国民の生活を圧迫している事態が浮き彫りにされた。また、七〇%近くが貯蓄率の減少を訴え、その減少率は平均で四〇%近くにも上り、所得減少率よりも激しくなっている。

増大する失業者

 新政権が出帆直後から取り組んできたIMF管理体制下の経済政策の中心課題の一つは、失業対策である。昨年十二月から九八年九月までの十か月で、二万三千余の企業が倒産した。一日当たり八十社弱の企業がつぶれた計算になる。また政府統計によると、失業者は九月末現在、百五十七万二千人に増大している。このうち百三十七万人が、IMFの管理体制以後に失職した人たちだ。しかし、失業者の集計から排除された就業放棄者、潜在的失業者ら、事実上の失業状態にある人たちを合わせると、現実には二百三十万―三百万人近くが失業状態にある、といわれている。さらに、来年初めになると、大学卒業者のうち、三分の二以上が失職者として社会に放り出されると予想されており、韓国社会は大失業時代が到来することになる。したがって、新政府は出帆直後から失業対策に着手してきたのである。

金政権による失業対策

 韓国政府による失業対策は、構造調整を通じた企業の競争力を回復した後、新たな仕事場を創出するという英米式の失業対策である。しかし、英米が長期間にわたって高失業社会に入っていったのとは異なり、突然、高失業社会に突入した韓国では、英米式の失業対策は非現実的である。現に、企業に対する構造調整が遅々として進んでいない現状では、政府の失業対策は事実上無策に等しい。これを象徴しているのが、失業総合対策である。韓国政府は、今年三月に失業総合対策費として五兆ウォンを計上したが、事態がさらに深刻であるとみるや、財源を十兆ウォンにまで拡大した。これは失業者一人につき一千二百万ウォンを貸し出すというものであったが、貸し出し業務にあたっている銀行が「貸し渋り」を行い、事実上失業者に回っていないのが実情である。この間、韓国の通貨・金融危機の原因を作り出した銀行が、今度は韓国の高失業事態に拍車をかけている。

 その一方で、新政府は整理解雇制という名の国家の命令による失業者の創出を行っている。政府自らが失業者を作り出しておきながら、その失業者に失業対策を行おうとしているのである。金大中政権が、苦痛を労働者だけに押しつけようとしていることは明らかだ。

危機に向かう国内経済

 韓国政府によるIMF体制克服努力の放棄は、そのまま韓国経済の悪化となって現れている。今年の経済成長率はマイナス六・四%までに低下し、史上最悪の事態を迎えようとしている。また経済収支も八十一億七千ドルの赤字が予想されている。さらに、一人当たりの国民所得は六千六百ドルへと低下したが、これは九一年と同じ水準である。外債規模に至っては一千五百八億ドルで、通貨危機後とさほど変化していないのが実情だ。そして、この規模は対GDP(国内総生産)比で、四九・四%に達する規模である。要するに、韓国民が一年間に生産する額の半分近くに外債規模が肉薄していることになる。

 こうした事態が三、四年続けば、韓国経済はとり返しのつかないところまで追い込められることになる。早急な危機克服策が望まれるゆえんである。

 (つづく)

 


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