民族時報 第850号(98.4.21)


 

 資料

 

 貧困の世界化(3)

 

世界的次元の外債償還

 世界金融体制は危険な岐路におかれてる。経済危機の中心には、毎日数千億ドルの政府公債と国債が取り引きされる公債市場がある。そのうえ、全世界の通貨市場での米国とヨーロッパ、日本のし烈な市場争奪戦は結果的に債権市場を苦境に陥れ、米ドル貨中心の外債貿易の規模を巨大化させている。米ドル貨の下落はまた、第三世界と東ヨーロッパで流通している途方もない規模のドルを論じる必要もなく、日本とドイツの金融機関が米国の公債を相当額、保有しているところからくる結果である。米ドル貨の下落は、公式的に「国家債務の不履行」と解釈されはしないが、国際資本市場で取り引きされる米国公債の価値が事実上、下落したことを意味する。

 何よりも一九九五年のメキシコの金融危機以後、明確に解決されたものは何もない。当時、米財務部とIMF、そして国際危機管理銀行が決定した「緊急救済金融」は、主にメキシコが国際債権銀行団と金融機関などの短期外債を償還するのに充当された。民間債務は都合よく姿を変えて公共債務に転換されたのだ。

 今後も何年かの間、メキシコ経済は難局から抜け出ることはできないだろうし、政治的・社会的分裂は一層深まるだろう。IMFとの協約で、メキシコの銀行は外国資本に占領されるだろうし、石油輸出で得たメキシコの所得全体は国際債権団の管理下に、ニューヨークにある銀行口座に入金されるだろう。

 しかし、メキシコ危機は複雑な金融問題の断片にすぎない。まったく同じような外債償還の悪循環構造が、IMF方式の改革を受け入れた大多数の途上国で反復されている。こうした脈絡から、IMFが「われわれは経済回復が順調に行くように監督措置を強化するだろう・・・・」と述べているのは、債務国がメキシコのような運命に置かれることもあるという点を暗示しているのである。

民間債務の転換

 八〇年代の初めから、先進国の大企業と銀行が持っていた債務の相当な規模は、公債に転換されて免罪された。同じように途上国政府が銀行の負債を代わりに負担できるように、途上国に対する多者間、双務間の借款が提供されてきた。民間債務は双務間または多者間の公共債務に都合よく転換され、銀行の「危険露出度」を減らしてやる。

 こうした「債務転換」は、現在の危機の核心的特徴である。償還不能の貸出金を含めて、企業と銀行の損失が体系的に国家の負担に転換される。メキシコの「緊急救済」事態は、このような転換過程のひとつの例にすぎない。

 米国でも一九八〇年末、企業合併のブームが起きたとき、国家は破産した企業を引き継ぎながら企業損失の負担を引き受けた。国家は破産した企業を引き継いだ後に廃業させ、その損失を税金控除資本損失で処理すればよかった。あわせて巨大銀行の「償還不能貸出金」は税金損失で処理された。苦境に立つ企業と銀行に提供される「緊急救済金融」もやはり、大きく見れば企業の債務を国家財政の負担に転換する原理に立っている。

 多くのOECD国家でも、国家補助金は職業創出の促進に使用されるよりも、慣例的に大企業の企業買収や労働節約型の技術導入資金、あるいは第三世界と東ヨーロッパの低賃金地域に生産基盤を移転する費用に使われた。企業の構造調整費用が国家の負担になっているだけでなく、公共支出の用途も所有の集中と産業労働力の大幅な縮小を促進する側に変質した。そうなると、今度は中小企業の連鎖的な倒産と、それにともなう解雇事態によって税収入が大きく弱まった。

国家の財政危機

 さらに、西ヨーロッパの外債危機は租税制度を大きく後退させ、これは公共債務の増大につながった。企業税は縮小される反面(付加価値税を含めて)、中・低所得の月給生活者から徴集する新たな租税収入(付加価値税の増大を含む)は、公共債務を履行することに使用された。国家は一方では市民から税金を徴集し、もう一方では企業補助金あるいは基金形態で国民の税金を大企業に「献納」しているということだ。

 そればかりか新しい金融技法に助けられ、企業の利潤がバハマ、スイス、チャンネル諸島、ルクセンブルクなどの海外金融安全地帯に流れ出しながら、国家の財政危機はより一層悪化した。例えとして、カリブ海の大英帝国植民地であるケイマン諸島には、預金規模だけで見たとき世界で五番目になる銀行があるが、預金の大部分はシェル企業のものだ。米国の財政赤字累積は、ほかならぬ大々的な脱税と会計上に記録されない企業利潤の流出と直接な連関がある。あわせてケイマン諸島とバハマ諸島(この地域の一部は犯罪組織が支配している)に預けている資金のうち、相当額は対米投資に使用されている。

金融資本の信託統治

 先進国では金融の悪循環が作動している。政府の企業「支援金」の最終的な受益者は、その国家の債権者らである。大企業支援を目的に財務部が発行する公共債も、やはり国家補助金を受ける銀行と金融機関で買い入れるという図式だった。このようにして、あきれた状況が展開される。すなわち、国家はみずから自分の債務を増やしているかと思えば、政府の企業支援金は公債と国債購入資金に投入されているのである。

 政府は、一方では補助金をめぐってロビー活動を行う企業家と債権者らによって二重の圧迫を受ける。そして公債の相当部分を民間銀行と金融機関が取得しているために、金融圏は政府の公共支援政策に対してより大きな圧力を行使できるようになる。

 (つづく)

 


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