民族時報 第847号(98.3.21)


 

 解説

 

 整理解雇制の問題点(下)

 

 前号で述べたように、火のついた韓国の経済危機を切り抜けるため、金大中新大統領は整理解雇制を導入して労働者にまず苦痛を負わせ、同時に「財閥改革」を推進している。

 だが、こうした改革方針に対して財閥側が抵抗し始めた。IMFの救済条件には、@財閥の構造調整A金融機関の整理B外資の投入と国内市場の開放――などがある。韓国では上位三十の財閥グループがGNP(国民総生産)の八〇%以上を占めているが、そのうちの八つが昨年に倒産した。それだけに、危機感とともに生き残り策に懸命なようではある。

 しかし、それには経営の透明化や系列および財閥間の業種の統廃合も含まれている。各財閥とも主力業種を手放したくないため、具体的な措置を取らず時間稼ぎを図っている。当初、金大中大統領は「財閥は系列企業を現在の三〇―四〇社から六社以下に減らすべきだ」との方針だったが、財閥側の反発にあい「自主的な対応」へと後退した。財閥側は事業分野の縮小を避けるために抵抗しつつ、「経済の根幹である財閥をいじめると、景気はさらに落ち込む」と政府に「脅し」をかけているのが実情だ。

 その一方で、いち早く整理解雇制の導入という「苦い薬」を飲まされた労働者の大量失業はすでに始まり、「金大中時代は大量失業の時代」とさえ言われている。

 まず、整理解雇制や倒産による失業者が急増している。昨年末の失業者は六十六万人だったが、一月には九十三万人、そして三月末までには百五十万人が見込まれている。三星経済研究所の発表では、低成長と企業の構造調整によって今年は失業者が百万人増え、全体の失業者は百五十万人―二百万人に達する見通しだ。家族を含めると四百万―六百万人の人口が失業影響圏に入り、生活も八〇年代後半の水準に後退するという。

 また韓国銀行によれば、韓国の国内総生産(GDP)成長率は九六年が七・一%、九七年が五・六%だが、九八年は一%以下かマイナスになるという。もし九八年の成長率がゼロの場合は失業者数は百五十万人に、マイナス二%となると二百万人に膨らむという見方もある。当局の発表では、労働力人口に対する一月時点の失業率は四・五%。前月の三・一%から急上昇し、十三世帯に一世帯が失業者を抱えている計算になる。

 当然のことながら企業の新規採用も大幅に見直され、過去二年間は六〇%だった大学卒業者の就職率も、今年は五〇%を割る見通しとなっている。その一方では、各分野での賃金カットも増えている。

 報道によると倒産や退職勧奨、とくには企業が経営上の都合で首切りが可能な整理解雇による失業者の急増によって、ソウルの街には「IMF放浪者」と呼ばれる失業者群が目立ち、外国に「出稼ぎ」に行く若者も増えている。ソウルの倒産企業数も一月に千二百二十六社を超えた。そのため、市内の労働事務所には失業手当てを求める人々があふれている。

 ホームレスも急増し、当局の調査でもソウル駅の地下通路が二倍になって四百人、市役所の地下鉄駅が三倍の百人に増えた。なかには家族に失業を知らせず、いつもどおりの出勤を装う人もいる。背広姿で家を出て、山のふもとで着替えて登山したり、公園にたむろする失業者の姿がテレビに映る「時代」となった。加えて通貨下落の影響で物価がはね上がり、一月の物価指数の伸び率は前年同月比一五・二%にもなっている。マスコミには「富益富・貧益貧(富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる)」という特集もあらわれている。

 このように「苦痛の分担」とは名ばかりで、首切りや賃金カット、物価高騰などで労働者、庶民にだけ重荷がかぶさっている。労働者の不満も高まり、一部ではストも行われている。金鍾泌氏の就任問題や二年後の内閣制実施の問題など、政局混乱の不安要素も多い。

 金大中政権には、官僚・財閥・マスコミ・労働界・反金大中色の強い慶尚北道の「五つの敵」があるとされる。すでに財閥の抵抗やマスコミの批判(新人事など)、労働界の不満が高まっている。金大中新政権の前途は波乱含みである。

 (金和樹記者)

 (終わり)

 


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