民族時報 第846号(98.3.11)


 

 論説

 

 金大中政権の初代内閣の政治的意味

 

 期待をあつめた金大中政府の初代内閣が変則的に出帆した。金泳三政権の総理が金大中政権の閣僚を推挙するというとんでもないことが起きた。そのうえ、内閣を率いる総理まで国会の同意を受けられないまま署理(代理)として任命されて、憲法上から権能を認められない内閣が誕生した。軍事ファッショ集団が国会を無力化するために強行した国務総理署理体制を、金大中政権が踏襲することになったのは実に残念なことだ。

 違憲論議にみまわれた内閣の閣僚も、「改革」とは距離が遠い人物で占められたことで、金大中政権の方向性に対する疑念が起こると思われる。二十人前後の閣僚のうち、陸士・安企部出身が六人、維新独裁と全斗煥・盧泰愚独裁政権出身が七人を占めて、五十年ぶりの政権交代の意味が薄まったとの指摘が多い。維新政権の第二人者だった金鍾泌総理署理が、朴正煕政権のもとで中央情報部の北韓局長を歴任した康仁徳・統一部長官と、軍事ファッショ体制で情報機関の幹部として働いた李鍾賛・安企部長をしたがえて、金大中政権の改革をスムーズに遂行できるか疑問だ。北韓との信頼回復が急務ななかで、このような保守回帰的な統一・安保チームが適合するのかと問わざるをえない。

 「準備された大統領」としての初組閣が不充分な点は、経済閣僚らの任命にも現れている。財政経済部長官ら新任の経済閣僚が大部分、全・盧開発独裁に手慣れた人物であり、「民主主義と経済発展を同時になし遂げる」という金大中大統領の構想とかみ合わない。極端な反共イデオロギーで武装した統一部長官と、冷戦時代の隷属経済が身体にしみこんだ経済閣僚らが、思考の転換が切実な国際通貨基金(IMF)時代を克服していけるのか心配が先にたつ。成長第一主義の開発独裁経済がIMF国難を招いたのに、隷属経済の主役だった人物を再登用して、IMF難局を克服しようとする発想自体に問題がある。

 冷戦型内閣では「脱冷戦時代に襲いかかったIMFの寒波」にうち勝つことはできないし、さらに二十一世紀の統一時代を迎えるには力不足だ。IMFを押したてて韓国経済を接収しようとする国際投機資本家の陰謀をはらいのけ、財閥改革と統一大業を同時になし遂げなければならない新政府に要求されるのは、徹底した改革である。残念ながら、新内閣は徹底した改革を通した統一大業の完遂には不適切である。

 国民は、冷戦の残滓(し)を清算できない金大中政権の初代内閣に失望している。五十年ぶりの政権交代に見合う改革内閣を期待した国民の要求を満足させていないのである。明確な志向点がなく、金大中大統領の三大改革にも適合しない人物を金大統領自身が抜てきしたことに、首をかしげる国民が多いようだ。国民を天のように仰ぎみて仕えると述べてきた金大中大統領が、権力の論理にしたがって政治家中心の内閣を構成した。金大中・金鍾泌合意の脚本のままに、権力の山分けに重点をおいた今回の組閣は、金鍾泌氏を中心とした守旧勢力と手を握った金大中政権の「新自由主義改革」の予告編のような印象を与える。

 IMF時代に心理的に大きく萎(い)縮している国民を失望させた組閣につづいて、総理の指名同意をめぐる旧態依然とした政争は、虚脱感さえ抱かせる。経済危機が加重するなかで政治危機までつくられ、「こうしていては危機克服どころか、国ごと滅んでいくのではないか」という憂慮がほうはいとして起きている。金大中大統領の華麗な就任式が終わった三時間後に、国会議事堂で繰り広げられた金鍾泌総理の指名同意の騒ぎは、政治圏を無政府的な状態にしている。組閣からみるとき、大統領は交代したが本質的に変わったものはない。

 違憲の論議をはねつけて金鍾泌総理にこだわる与党内部の事情と、金大中大統領の意図を推測するのは難しい。金大中大統領は、国会が開かれている途中に総理署理体制の不可避性を先に明らかにして議政を無視した非難をさけがたくなり、野党を刺激する結果を招いた。金鍾泌総理指名を強行した金大統領の政治力不足と、与小野大政局を円満に主導できない与党の指導力不足があらわになっている。言論機関は国政の漂流を防ぐために金鍾泌氏の自主辞職をうながしたが、金大中・金鍾泌合意が白紙化するか、内閣制の夢を金鍾泌氏が自ら放棄しないかぎり、金大中大統領が辞職を勧告できないだろう。

 国政漂流の根本原因は「金大中・金鍾泌の政略結婚」にあり、与小野大の不利な条件の中で政略結婚のシナリオに従って金鍾泌総理体制を強行しようとするところにある。ぜい弱な金大中政権が生きる道は、国民とともに改革を推進して国難を克服することであるにもかかわらず、IMF国難を招いた守旧勢力を再び呼び込む矛盾を自らもたらした。金大中・金鍾泌合意で足首を捕まえられているかぎり、金大中政権の将来は険しいように見える。

 (全東秀記者)

 


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