民族時報 第827号(97.8.1)

 

座談会

 

青年各団体代表の座談会


主席者

李 政秀・韓青同副委員長

金 有義・朝青同副委員長

佛木 完・日青協事務局長


参政権問題どうみるか

 司会=二十一世紀を前に、「国際交流」が盛んになっているが、それぞれどう考えているか。

 佛木完=国際交流が年ごとに高まっており、最近は地域レベルにまで広がっているようだ。地域の青年が独自に交流を進めており、すそ野を広げていることは非常にいいことだと思う。

 ただ問題は、国際交流を通して何を学ぶかだ。国家間の優劣を図るのではなく、交流を通して互いの文化の違いを認識し、尊重することが最も大事だ。その意味で、すぐ序列化する日本の青年は大いに反省すべきだろう。また国内でも、在日韓国・朝鮮人青年との交流が日常的に可能にもかかわらず、それを越えて、諸外国の青年との交流だけを国際交流と位置付けているようだが、その一面的な考えを変えていかないと、真の意味の国際交流は図れない。「内なる国際化」をどう形成していくかが、重要な問題だろう。

 金有義=冷戦体制が崩壊して以後、大きく激変する環境のなかで、新たな国際関係の構築が模索されており、二十一世紀を担うわれわれ在日二世、三世が国際交流をどう進めていくか、が問われていると思う。重要なことは民族、文化の違いを互いに理解し合う関係を形成することだ。

 李政秀=地域について言うならば、在日同胞青年の多くが通名で生活し、好むと好まざるとにかかわらず、日本人の中で生活せざるをえない状況があるが、これは必然的に民族意識の希薄化を引き起こしている。つまり、お互いが民族や文化の違いを認識し、理解し合う関係に至っていないことを意味していると思う。これは、日本社会の問題であるとともに、われわれ在日同胞自身の主体的な課題でもある。

 司会=いま、日本社会で話題になっている参政権問題についてどう考えるか。

 金=現在、この問題で賛否両論があるようだが、在日社会では、この問題でコンセンサスが得られていないのが現状だ。将来、われわれ在日同胞のあり方を問う重要な問題であるからだ。日本社会にも大きな影響を与えよう。だが、われわれは反対の立場を取っている。その理由の一つは、同化・帰化に拍車がかかるということだ。二つ目に、在日を取り巻くさまざまな問題の根本的解決につながらないということだ。なぜなら、解決されず温存されたままの差別構造が、参政権が付与されたからといって解決されないからだ。むしろ参政権の付与によって同胞社会に分裂を生み出し、増幅させるだけではないか。

 在日同胞を参政権運動に走らせる背景には、在日同胞の存在をなくしていこうとする日韓両政府の思惑がある。過去の植民地支配の歴史をきっちりと清算せずに、忘れさせ、風化させようとする極めて危険な意図がある。在日朝鮮人が朝鮮人らしく生きるためには、参政権の獲得ではなく、根本的な解決に向けて努力すること、自己の民族主体意識を強化することが重要だろう。

 李=韓日基本条約の時、韓国政府は在日韓国人に対して、いずれは帰化する存在と規定し、今日に至っている。その過程で、参政権問題が浮上した。ここで気づくことは、在日同胞が祖国・民族と切り離され、民族的主体意識が欠如したなかで、市民的権利として参政権を獲得することは、言うまでもなく同化・帰化の道を早めることにつながるのではないか、これを警戒している。日本社会の差別構造が維持されているなかで、参政権問題を論ずることは、ナンセンスだ。つまり、民族的な権利が保障されていないなかで、この問題だけが先行すると、ことの本質が見えてこない。そこが最も危ぐするところだ。

民族教育の発展に向け

 司会=先ほど、論議になった民族的アイデンティティの確立に向けて、どのような取り組みを行っているか。

 金=朝青同として重要視し、取り組んでいる課題は、新しい世代をどのように民族的に育成していくかだ。いわば教育問題だが、一世の方たちが血のにじむ努力で形成した民族教育の功績をしっかり受け止め、これからも継承していくことが取り組みの一つだ。民族教育体系(六・三・三・四制)のもとで、民族意識なり、民族素養を育むことが重要な問題としてある。

 もう一つは、地域での取り組みとして、日本学校に通う同胞青年らの民族性確立に向けた取り組みを強化している。

 李=韓青同は、在日同胞青年を対象にさまざまな啓もう運動を行っている。大多数の同胞子女が日本学校に通っているが、その多くが通名を名乗りながら日本語を国語として学んでいる。当然、日本を中心とした歴史観を持たされ、民族としての誇りを養う素地はない。そのような同胞青年らを民族的に覚醒していくことが、われわれにとって第一課題だ。わが民族の言葉や文化、歴史を愛せるようになってこそ、初めて民族主体性の回復が果たせると思う。

 韓青同は全国各地に地方本部や支部を置き、支部活動を通して同胞青年宅を訪ね、ウリマル(韓国語)講習会や文化サークルなどの活動を展開している。その意味で、韓青同活動は同化・帰化にさらされている同胞青年らの民族主体性、民族の誇りを回復することにある。また在日同胞の権益擁護問題についても、在日同胞が真に民族的主体性、意識を持って生きていくには、祖国(韓国)の変革が必要だという結論に達し、歴代独裁政権の棄民化政策に反対する運動を行ってきた。さらに最も重要な事業として、祖国の自主的平和統一を実現することだ。そのために、海外韓国人として統一運動に寄与できる運動を進めている。

 佛木=日本の学校教育で、今最も大事なことは、近現代史の歴史教育だと思う。過去の日本のアジア政策は大きな誤りがあり、それをわれわれは意図的に学ばされてこなかった。その負の部分を隠して、日本人としてのアイデンティティを語ったり、国際交流をうんぬんすることはおかしい。あの戦争に日本がどうかかわったのか、われわれはそれを学ぼうと、九三年に松代大本営の地下ごうに入った。改めて、当時朝鮮人らが強制的に過酷な労働を強いられていたということを学んだ。

 次に、韓国・ソウルに行って、元慰安婦ら戦争体験者から生の声を聞き、真の国際交流の意味や、二十一世紀に向けた次の世代の友好を築くためには、歴史の負の部分に目を閉ざしていてはならないと思った。

 金=民族的主体性を育んでいく活動とともに、過去に対する認識を共有し、ともに学んでいくことが大事だろう。朝鮮・韓国人としてのアイデンティティを確立していくうえで、過去の問題についてしっかり見つめなければならないし、その根本的な解決のために、青年がアクションを起こさなければならない。

 李=どの部分で歴史認識を共有していくのか、が大切だと思う。それなくして、相互発展はないだろう。その前提に、過去の過ちに対する真摯(し)な反省が必要だ。

 佛木=その問題は、今の交流を通して考えていくことができると思う。負の歴史を克服していく動きを作っていかなければならない。つまり、過去の過ちを再び繰り返さないために、今の政治をどうするかという観点に立たないといけない。

青年同士の相互交流を

 司会=日本が軍事大国化に突き進もうとする動きが顕著になっているが。

 李=韓国人の立場として、危機感を覚える。とくに「ガイドライン」の見直しによって、日本の防衛範囲を周辺から韓半島を含む地域まで広げている。歴史的経緯を考えれば、危機感を覚えざるをえない。これは明確に「韓半島有事」をにらんだもので、反対の声を高めていかなければならない。これは、われわれだけの問題ではなく、アジアの平和と安定を望むすべての人々の重要なテーマだ。

 金=「有事立法」制定の動きのなかで、梶山発言にもあるように、在日朝鮮・韓国人に対する監視・規制へとつながっていくと思う。朝鮮戦争の前年に団体規制令が出され、在日朝鮮人の団体をつぶしていった歴史的経緯がある。

 佛木=過去の問題がはっきり清算されていない状態で、日本のこうした危険な動きがアジアの人々にどれだけ警戒心を与えているか、考えるべきだろう。

 司会=こうした時期こそ、次の世代を担う青年相互の交流が重要なようだが。

 金=朝日・韓日間で、平和問題を共通課題として持つことが重要だと思う。「ガイドライン」の見直しや軍事大国化の動きが、朝鮮半島の分断を口実に進められている。われわれが祖国を平和的に統一していくことが、こうした動きを阻止することにつながるだろう。平和を志向する日本の青年運動の発展にも貢献できると思う。双方が友好・相互理解の輪を広げていけば、アジアの平和の発信基地にすることができるのではないか。

 佛木=政策的、歴史的に作られてきた緊張関係のなかに、われわれがいるわけで、これをどう打ち破り、信頼を深める交流を進めていけるかが、いま問われていると思う。

 金=九五年の阪神淡路大地震の時に、日青協から貴重な義援金を、民族教育を受ける子どもたちのために送ってもらって、心が温まった。そのような地道な生活レベルで、未来を担っていく青年としての交流を一つ一つ積み重ねていくことによって、「新しいアジアの平和と友好」の礎が作られるのではないかと思う。

 また、アジアの平和において、朝鮮の自主的平和統一も、いまのアジアと世界の平和には相当寄与する。そこにわれわれが力を注ぎながら、微力ながらも寄与していく。青年らの活動が未来を作っていくのだという決意を新たにしながら、進む道こそ未来がある。

 佛木=まさに、朝鮮半島の自主的で平和的な統一をどのように実現していくのか、アジアと国際的な緊張緩和に大きな役割をはたすのは事実だ。いまの本国同士がいろいろな緊張関係を持っているわけだから、本国同士ではできない別のうねり、例えば、きょうこのように三人が討論の場を持ったわけだが、日本だからできる雰囲気を醸成していく方法もある。日本にいるわれわれが、応援する素地を作っていくのは、われわれだからこそできることもあるかもしれない。

 李=まず、南と北、海外の青年学生が団結して、連邦制統一運動を行っていくため、九〇年代に入って、南と北、海外をむすぶ祖国統一運動をやっている。韓半島の統一が世界の平和に寄与することを訴えていきたい。そのうえで、日青協などとの青年同士の民間レベルの連帯をしっかり作り、国家レベルの交渉の後押しができるように、民間の力を通して国家の政策に圧力をかけたい。