民族時報 第823号(97.6.21)

 

解説

 

米日「ガイドライン」見直しの問題点を暴く

 

 八日にハワイでの米日防衛協力小委員会で決定、発表された「米日防衛協力のための指針(ガイドライン)」見直しの中間報告が、内外で大きな論議を呼んでいる。

 「指針見直し」は「日本周辺地域における事態(有事)」、つまり日本防衛とは無関係の「韓半島など」での地域紛争に日本の自衛隊が前線に出動し、アジア・太平洋全域で米軍との共同作戦を展開するという、自動参戦の仕組みが中心内容となっている。

 中間報告では、日本の「周辺有事」に、日本領土(領海、領空)を離れた公海上での米軍の軍事行動を支援するための自衛隊の作戦行動を具体的に明記している。米軍が日本全土を出撃基地、兵たん基地として民間港湾・空港まで利用する問題から、公海上の米艦船への武器・弾薬を含む戦争物資の海上輸送、公海上での自衛隊による機雷掃海(除去)、船舶の臨検、米軍への軍事情報提供などの作戦分担や避難民の救援など、四十の検討事項が列挙されている。

 これを八月ごろまでに確定し、さらに日本有事および周辺有事の際の「有事法制」の整備、自衛隊が戦う場合の「交戦規則」まで作るという。今回の新指針は、「これは日米の戦争マニュアル(教範)だ」と日本のマスコミも指摘するように、自衛隊が韓半島やアジア・太平洋に乗り出し、米軍と共同作戦を展開するための枠組みづくりといえる。その問題点や政治的背景、ねらいなどを検討してみる。

 

 

 まず、現在の自衛隊というものが憲法(第九条=戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認)違反とされているため、その任務についても歴代内閣は「日本防衛」と規定し、自衛権の発動についても「日本に対する急迫不正の侵害がある時」との立場を取ってきた。 だが今回の「指針見直し」に見るごとく、日本防衛とは無関係な「周辺有事」で自衛隊を出動させ、米軍と共同作戦を展開するというのは、明らかに「自衛の範囲」を逸脱し、「集団的自衛権」の行使となる。日本国内で論議されている最大の問題点である。そのため、自民党、新進党など新指針推進勢力は憲法を変えるために奔走する一方で、現行憲法を都合のいいように変えるという「解釈改憲」によって、米日新安保体制の構築を進めているのだ。

 次に、冷戦が終結して軍縮の時代となり、世界各地で「平和の配当」が要求されている時に、なぜ日米新安保、新指針といった軍事協力体制、しかも「極東地域」から「周辺地域」へと拡大した共同作戦体制が必要なのか、という問題である。

 それには、ソ連の崩壊・冷戦の終結後、「唯一の超大国」として全世界に前進配備している軍事力を背景に、依然として「力の政策」による覇権を追求するために日本を利用し、その役割分担を増大させようという米国の戦略的ねらいと、これに便乗して経済大国から政治大国へとのし上がり、海外膨張・影響力の拡大をねらう日本の打算が下敷きになっている。

 

 

 冷戦当時、米国は「ソ連の脅威」「ソ連の攻撃をけん制する」という共通の名分のもとに、米日安保条約に基づいてアジア・太平洋における覇権を追求してきたし、日本もまた軍事力の増強、軍事大国化への道をひた走ってきた。しかし冷戦の終結によって「ソ連の脅威」が消滅したため、日米安保条約体制の存在理由がなくなった。そこで、「ソ連の脅威」に代わる「地域的脅威」をうんぬんしつつ、「地域安保」の米日安保協力の強化を打ち出したのである。

 アジアでは独自の社会主義を堅持する北韓を名指しし、「地域的脅威」の焦点だとして包囲網を形成してきた。「ガイドライン」もその一環として七八年に策定された。今回の新指針でも「北韓事態」を押し出しつつ、米日共同作戦計画、自衛隊の出動までを合理化している。

 そのために米日側は時とともに、虚構の「北韓事態」を描き出している。当初は「軍事力の数的優位」をうんぬんした。だがその後、「ソ連や中国の後ろ盾がなくなり、兵器の老朽化や石油不足」などのため、「北の脅威はない」といわれるようになると、今度は「自暴自棄になって戦争をしかけてくる」「大量の難民が日本に殺到する」とし、これが「周辺有事」だという口実を持ち出している。こうした主張や論議がうそだということは、米国が国防計画の見直しや今回の新指針で「韓半島の南北統一が実現しても、東アジアの米軍十万人体制を維持する」と明言していることからも明らかである。駐韓米軍の存在理由が「北からの南侵」を阻止して平和と安定を維持するというのは口実で、本当の理由は、米国のアジア・太平洋に対する政治、経済的な「死活的な国益」を守るために、十万という米軍事力を後ろ盾にして影響力(覇権)を維持するということにほかならない。

 

 

 そのために、米国はすでに多様な形で韓半島事態を想定し、共同作戦計画を秘密裏に練ってきた。韓米間では共同作戦計画「5027」(有事のピョンヤン占領)があり、昨年秋の「フォール・イーグル」演習はその適用であった。同じように、韓半島事態や中東事態が日本に波及した場合の、日米共同総合作戦計画「5000」から始まる一連のものがある。昨年六月の「リムパック九六」演習では、ハワイで多国籍軍による韓半島上陸作戦・進行・制圧・戦後処理や避難民救出作戦も行われた。同年十二月の米日共同総合演習「キーン・エッジ」演習も同様のシナリオによるものであった。

 とくに、九四年の「北韓の核問題」をめぐる緊迫時には、国連決議のない場合の多国籍軍による威嚇、制裁行動を含む共同作戦計画が練られた。日本も「難民警戒」(陸自)、北韓海域までの進出(海自)、北韓の戦略拠点への攻撃(空自)が検討された。

 この時の経験を踏まえた発言が、昨年四月の梶山静六官房長官の「朝鮮半島有事による大量難民の日本到来、総連・民団の内乱事態に対処する有事立法の必要性」発言であった。この「大量難民」説も「北朝鮮有事」説と同じく根拠も可能性もないものだ。

 今回の「ガイドライン見直し」は、こうした一連の日米共同作戦計画を集大成し、制度化し、その対象範囲も「周辺地域」の名によって韓半島から広範なアジア・太平洋へと拡大し、実効あるものにしようとしている。

 のみならず、日本政府はこの機会に、来年中までに「有事法制」を整備しようとしている。日本有事や韓半島からの難民などに対処して自衛隊や米軍の活動を保障し、さらには「周辺有事」に在外日本人や難民を救済するために、自衛隊機や艦船を派遣するなどの計画である。この中では、朝鮮総連など在日同胞団体に対する弾圧措置も含まれている。最近、国会で成立した外為法の改定(緊急時に日本政府独自の判断で外国送金を停止する)や、「集団密航罪への通信傍受(盗聴)許容」の検討なども、その一環である。

 こうした新指針に対しては、日本国内やアジア諸国から厳しい非難の声が上がっている。韓国政府は基本的に「歓迎」だということであるが、いつまで日本にすり寄ろうとするのだろうか。日本当局は過去の歴史を振り返り、「剣をもてあそぶものは剣で滅びる」という教訓を忘れるべきではない。

 (金和樹記者)