民族時報 第1169号(09.10.15)


【資料】北朝鮮が核を保有した意味/朝米協議基本に六者並行へ

    朝鮮半島の平和と統一のために(上)

 李康實(韓国進歩連帯常任代表)

 韓国進歩連帯の李康實常任代表が十・三日韓シンポジウムで行った報告を要約して、二回に分けて掲載する。

 朝鮮半島は、朝鮮戦争後にも何度も戦争の危機がありました。特に一九九四年六月の第一次朝鮮半島核危機のときには、米国の先制攻撃による戦争勃発の直前にまで至りました。このときはカーター元米大統領が仲裁役として北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問して、米国の作戦を中断させるきわどい瞬間を経験したことがあります。

 韓米連合軍の軍事演習が、数万の将兵と最新兵器を動員して絶え間なく強行されます。そのたびに朝鮮半島の軍事的緊張と戦争の危険は高まります。北朝鮮は、米国の対北敵視政策と侵略行動に対抗して、六十年に渡って準戦時体制を維持せざるをえず、自らの体制と政権を守るために国内総生産(GDP)の約三〇%を国防にあてなければなりませんでした。北朝鮮が核兵器保有を決断したのは、最も安くて、最も効果的な米国の侵略行動の抑止策だからです。

 ところが、いまだに韓国の多くの人々は、北側の核兵器が南側を攻撃して赤化統一をするために開発したものだと考えています。

実際、柳明桓・外交通商部長官がそのような発言をして、ひんしゅくを買ったことがあります。 実際に北側の核兵器は、朝鮮半島で戦争の危機を高めているのではなく、戦争を抑止する役割を果たしていると見ることができます。もしも北側に核兵器がなかったならば、米国はイラクやアフガニスタンのように北朝鮮を攻撃したでしょうし、韓米同盟を締結している韓国も戦争に加担して、朝鮮半島は戦場になったでしょう。

韓国内の一部の市民団体や環境団体は、北側の核兵器に対して五十歩百歩式の両論非難的な立場をとっています。米国も悪いが、その悪い核兵器を保有する北朝鮮にも問題がある、というのです。核兵器・核=原子力発電などは、自然環境を破壊して無数の人命を殺傷する人類の敵だからです。しかし、北朝鮮に核兵器が存在しなかったならば、韓国は戦争にまきこまれて、さらに多くの人が犠牲になり、さらにひどい環境破壊がなされたことしょう。そのように北朝鮮が核兵器を保有していたことによって戦争が抑止されている現実を認定せざるをえません。

 したがって、本当に核の被害をなくし、核戦争が起きないようにするには、北朝鮮に核兵器保有を決断させた米国を批判して圧力を加え、北朝鮮と朝鮮戦争の終結=平和協定の締結をするようにしなければなりません。北朝鮮は確実な安全さえ保障されれば、いつでも核兵器を廃棄すると明言しています。あわせて北朝鮮の核兵器は、核拡散をもたらすのではなく、核兵器を廃棄する方向において重要な役割を果たしていることに注目する必要があります。現在北朝鮮は、北側の核だけを廃棄するのでなく、韓国と駐韓米軍の非核化をふくむ包括的な朝鮮半島非核化を主張しており、そうでないなら絶対に核兵器を廃棄しないと主張しています。したがって米国は、北側の核を廃棄するためには朝鮮半島の非核化を決断しなくてはならないでしょう。

 つまり、朝鮮半島の非核化を誘導しているのは北朝鮮の核であって、無条件に核自体に反対して北側の核をなくそうと強要している人々ではありません。北朝鮮の核を廃棄するためには、北朝鮮の核廃棄を主張する前に、米国が率先垂範して、朝鮮半島の核の傘を廃棄するようにすればよいのです。

 オバマ大統領は、核兵器の廃絶を目指すと語ります。今回の国連安全保障理事会は「核なき世界」決議案一八八七号を採択しました。北朝鮮はこれを「全面的に排撃し、いささかも拘束されない」と強く非難しました。北朝鮮とイランの核問題だけをとりあげて、これにしたがわなければならないというのは道理に合わず、「最大の核保有国がまず核軍縮に取り組み、撤廃させることが世界の非核化に向けた先決条件である。現実的で重要な問題は無視され、核大国の一方的要求だけが列挙されている今回の決議は、世界の非核化という看板のもとで核独占による自身の支配権を維持しようとする核大国の策動にほかならない」と主張しました。正当な批判です。真に核のない世界望むなら、核兵器を大量に保有している核大国が模範を示すべきです。いずれにせよ、米国が北朝鮮の核廃棄を誘導しているのではなく、北朝鮮が米国の核廃棄を誘導している局面になっているわけです。

 北朝鮮と米国は核問題をめぐって長期に渡って攻防戦を展開してきました。米国は、北朝鮮が先に核を放棄してこそ、北側が要求する体制保障、経済封鎖解除、平和協定締結などが考慮できるとしてきました。それと同時に、外交・軍事・経済封鎖などの手段で北朝鮮を屈服させようとしました。もちろん一九九四年の朝米ジュネーブ協議や、二〇〇〇年の朝米共同コミュニケなど、当時のクリントン大統領は、武力で屈服させて政権を崩壊させる計画を中断して、対話と交渉で問題を解決しようとしたことはあります。しかしブッシュ政権以後、このようなクリントン政権の計画は霧散して、武力による北朝鮮崩壊という対北敵視政策が復活しました。米国は北朝鮮を「悪の枢軸」だとして先制攻撃さえ公言し、さまざまな軍事攻撃を計画しました。

 しかし、二〇〇五年二月に北朝鮮が核兵器保有を宣言したことにより、状況が急変しました。米国は核保有国を攻撃したことがありません。さらには、一九九八年の光明星一号(いわゆるテポドン)の発射で、北朝鮮は核弾頭を米国本土に運搬できる大陸間弾道ミサイルを保有していることも立証していました。したがって、米国が北朝鮮を攻撃するなら、自国本土も攻撃を受けると予想しないわけにはいきませんでした。北朝鮮は核兵器保有宣言を通じて、朝米対決の終息を促し「朝鮮半島の核問題」解決の方法として、「一括妥結」を再度要求しました。米国は結局「先核放棄・後妥結」方式を放棄して、「行動対行動」「同時行動原則」に合意した二〇〇五年九・一九共同声明に合意するほかありませんでした。

 しかし米国が九・一九共同声明の合意内容を実践しなくなると、北朝鮮は二〇〇六年七月のミサイル実験と十月の核実験で、九・一九共同声明の合意内容を「行動対行動」で具体化させる二〇〇七年二・一三合意と十・三合意を引き出しました。この合意によって、朝鮮半島の非核化と平和体制構築の局面が本格的に始まりました。しかし米国はまたしても、核施設の無能力化段階をへて核廃棄へ至る過程で論議すべきである核検証報告書を要求したため、これ以上の進展はなしとげられませんでした。こうしてまた朝米関係がこう着状態に陥りました。

 オバマ政権が発足することで、朝鮮半島の核問題がすみやかに解決されるとの期待が高まりました。北朝鮮は、複雑な利害関係がからまる六者協議では、朝鮮半島の核問題解決のプロセスが遅々として進展しないため、問題の真の当事者である朝米が直接対話し交渉することで一括妥結することを望みました。

 北朝鮮は、米国を交渉のテーブルに引き入れるために四月に銀河二号ロケットで人工衛星の光明星二号を打ち上げました。国連安保理は、これが国連決議に違反すると非難して、北朝鮮に経済制裁を加えるとの議長声明を発表しました。これに対して北朝鮮は、宇宙空間を平和的に利用するのは主権国家の正当な権利だとして、国連制裁を主権にたいする侵害行為だと規定して、六者協議には絶対に参加しないことと、自衛的な核抑止力を強化していくと宣言しました。その後北朝鮮は二回目の核実験を敢行し、国連安保理は対北制裁決議案一八七四号を全会一致で採択しました。

 こうして朝米関係が再度こう着状態に陥りました。北朝鮮は、新たに抽出されるプルトニウムの全量を兵器化する、ウラン濃縮作業に着手する、米国とその追従勢力の封鎖を戦争行為と見なして断固として対応するとの立場を明らかにしました。

 この過程で米国は、中国が対北経済封鎖に参加するよう要求しましたが、同意をえられませんでした。中国は基本的に韓米日同盟の強化を望んでいません。朝中友好関係を維持して、朝鮮半島情勢を安定させることが中国の利益に合致すると判断しているからです。

 結局米国は、対北制裁を強化すればするほど、北朝鮮をより一層核武装することにつながることを理解するようになり、対話と交渉で問題を解決するほかはないこともまた、認めざるをえませんでした。そこで米国籍の女性記者の釈放問題を媒介に、クリントン元大統領をピョンヤンに派遣。北朝鮮は、クリントン元大統領を通じてオバマ大統領にメッセージを送ったのです。クリントン元大統領の訪朝で、朝米二者会談が始まったといえます。すでに米国は、韓国と日本の同意をえて、中国を通じて北朝鮮と合意を形成する状態にあり、朝米交渉を基本として、六者協議を同時進行する方向になるでしょう。

 朝米関係は、朝米実務協議―朝中対話および韓米・米日対話―南北交流の再開―朝米特使の相互訪問など、同時的・連続的に展開され、最終段階でオバマ大統領と金正日国防委員長の首脳会談も推進されることになるでしょう。

 (つづく)

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