民族時報 第1165号(09.08.15)


【解説】政権批判に対する見せしめ/海外からも弾圧に非難の声

    時局宣言発表で全教組幹部に重懲戒

 韓国民は一九八七年の六月抗争で軍事独裁政権を終息させて民主化時代を開き、二〇〇〇年の南北首脳会談と六・一五共同宣言を契機に、南北の和解・協力時代へと前進してきた。ところが李明博政権は、金持ち優先の独善的な国政運営で民主主義を後退させ、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)敵視政策で南北関係を最悪の状態にしている。

 昨年のキャンドルデモは、李政権への国民的な抵抗だった。しかし李政権は報復弾圧に乗り出し、今年に入ると独裁時代への回帰を露骨にした。その渦中で盧武鉉前大統領が自ら命を断ち、これを契機に国民は、「六月抗争の継承」「民主回復」を叫んで街頭に進出した。李政権の国政運営の転換を要求する時局宣言は、大学教授を皮切りに、宗教界、学生、作家、在野元老らへと拡散していき、そうしたなかで教師も時局宣言を発表するにいたる。

全国教職員労働組合(全教組)に所属する教師をはじめ、団体に属さない教師も含む一万六千百七十一人の教師らは六月十八日、「競争万能の学校政策を中断し、学校運営の民主化を保障せよ。貧困家庭の学生支援と教育福祉を拡大し、学生の人権保障を強化しろ」との教師時局宣言を発表した。 

 教育科学技術部(教科部)は二十六日、全教組の幹部八十八人を検察に告発し、市・道教育庁には解任・停職などの重懲戒を要請するなど、時局宣言に参加した教師全員を懲戒する方針を明らかにした。教科部はその根拠として、誠実・服従・品位維持の義務と集団行為の禁止を規定した国家公務員法の条項と、教員労組法の政治活動禁止条項をあげた。しかし法律専門家はもちろん、教科部の内部検討でも、時局宣言は表現の自由に属し、懲戒するのは難しいとの声があがった。それを押し切っての強硬弾圧だった。検察と警察はこれを受けて、ただちに全教組本部を押収捜索し、告発された全教組幹部らを召還調査した。

 李政権の過剰な強硬弾圧に対して、二万八千六百三十四人の教師と全教組は七月十九日、「表現の自由を保障し時局宣言教師への弾圧を中断せよ!」と題する教師第二次時局宣言を発表して、不服従と強い抗議を明らかにした。

 同宣言は、「教師は教科書に込められた生命、平和、正義、そして民主主義と人権を口先だけではなく、全身で実践し、教える存在だ」として、「憲法に保障された表現の自由を保障し、時局宣言に参加した教師への告発と懲戒を撤回せよ。特権層中心の教育政策を中断し、教育格差を解消するための政策を推進せよ」などと要求した。

 教科部は三十一日、第二次時局宣言を主導した全教組幹部八十九人の重懲戒を発表。チョン・ジヌ委員長は罷免、市・道支部長ら二十一人は解任、本部の専従者六十七人は停職処分、懲戒対象者全員を検察に告発すると明らかにして、第一次宣言よりも弾圧の強度を高めた。

 この弾圧に各界から非難の声があがっている。ともにする教育市民の会の金ミョンシン共同代表は、「各界が大規模な時局宣言を発表するなど、政府への批判が相次ぐなかで全教組だけを厳しく処罰するのは 『みせしめ』のためだ」と指摘、李政権は「全教組はわが国最大の教員労組であり、教育の主体であることを認めるべきだ」と述べた。全教組もこの日の記者会見で、重懲戒の「政治的意図」を強く批判した。

 ハンギョレ新聞は八月一日の社説で、教科部が懲戒の強度を高めたのは、「この際、無理をしてでも全教組に決定的打撃をあたえようという政権次元の動き」「李政権は執権以来、全教組を圧迫する政策で一貫してきた。政権が追求する競争中心の教育政策に反対するという点が最も大きな理由だ。一斉試験の拒否運動をした教師らを懲戒し、市道教育委員会に全教組との団体協約を解約するようにしたのに続き、全教組本部の押収捜索まで行った。教師時局宣言関連文書とコンピューターサーバーはもちろん、押収捜索対象でもない個人の手帳まですべて押収していった」と強く批判した。社説は続けて、「気に食わないという理由で合法組織を圧迫し、あらゆる公権力を動員して脅迫する姿は、とうてい民主政府とはいえない」と非難し、弾圧の中止を求めた。

 李政権への抗議は国内にとどまらず、海外からも寄せられている。教育インターナショナル(EI)は六月三十日、李大統領に抗議書簡を送った。書簡は「教師らへの懲戒決定に深刻な憂慮を表明する」とし、「全教組の指導者らを連行・拘禁することで結社の自由を制限した韓国政府の試みは非常に遺憾だ」と抗議した。また「国際労働機構(ILO)協約は、労組と労組指導者らに保障された表現の自由は、彼らが政府の経済・社会政策に対して批判することまで含まなければならない」と指摘。「韓国の教員労組組合員らが政府の威かくに恐れることなく、集会と表現の自由を享受できるように必要な措置を講ずるよう要求する」と主張した。EIは、ベルギーのブリュッセルに本部をおき、百七十二か国、約四千団体、三千万人の教師が加入している世界最大の教員団体だ。

 李政権は、基本的人権さえも無視する国との国際的な汚名を自ら招く行為を、ただちに中断しなければならない。

 (田泰淳記者)


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