民族時報 第1163号(09.07.15)


【読書案内】運動の原点、源流、現在

   『ドキュメント 在日本朝鮮人連盟』

 呉圭祥著

 在日本朝鮮人聯盟(以下、朝連と略記する)は、一九四五年十月十五・十六日の結成大会から猛烈な活動を開始し、四九年九月八日、日本政府の「団体等規制令」適用によって強制解散させられた。本書は、朝連の歴史と活動を、「なによりも事実を記録する」ことを優先し、もちろん歴史家としての著者の責任において、朝連の文書・記録、官憲資料、新聞・雑誌などの文献資料、関係者の証言の検討と取捨選択のうえで構成された、初の本格的ドキュメントである。

 とくに貴重であり、比類のない本書の特徴は、当時活動を担った多くの人びとからの証言、聞き取りが、記述にとてもよく活かされていることだ。

 次に、多数の朝連幹部・活動家の肖像が、略歴とともに収録されたことだ。歴史のなかで個人が果たす役割は、過大にも過小にも評価してはならないが、実質的に「日本国」がなく、そして「大韓民国」(韓国)も「朝鮮民主主義人民共和国」(共和国)もなかった時代、分断国家の建国=戦争前夜に、在日朝鮮人の活動家が全身全霊で、歴史創造に献身した事実は、記録されてしかるべきだ。また、貴重な写真が数多く収録されたことも、大いに評価されるだろう。

 一方で、個々の事件、人物の評価については、例えば、韓民統=韓統連の創設メンバーである金載華先生を、「反共的本質を露にして出ていったものもいた(後略)」とすることなど、多々異論が提起されるだろう。

 それにしても、朝連の活動はすさまじい。本書は歴史篇と活動篇という構成をとっているが、朝連の歴史はそのまま、朝鮮半島での冷戦対立の激化から戦争という悲劇に直結している。とりわけ、米軍占領下の日本に存在したため〈南朝鮮〉の歴史が重なる。同時に、朝連の政治路線が、朝連構成員の多くが〈南朝鮮〉出身なのに、どうして共和国支持に傾斜したかも、歴史的に検証できる。

 活動領域は、生活諸問題(帰還、選挙権、国籍、法的地位)、民族教育、分断反対、財産取得権、言論・出版、文化・芸術・スポーツ活動など、まさに在日朝鮮人のために、ひとつの「政府」のような活動を、それも自主的に、自立的に展開してきたことが立証されている。それを支えたのは、在日同胞大衆であったことに、言いようのない感動を覚えるのは、わたしだけではないだろう。

 であるがゆえに、米占領司令部と日本政府の憎悪を一身に受け、徹底的な弾圧が加えられ、ついには解散させられた。それは、くり返しになるが、朝鮮半島での植民地支配の清算、階級闘争・冷戦対立の激化の反映であった。そして現在の「北朝鮮・朝鮮総連バッシング」に直結していることを、重く受け止めなければならなくなる。

 朝連の歴史と活動は、在日同胞運動の原点・源流であり、現在でもある。本書はそれをあざやかに証明している。

 (岩波書店・3800円+税)

 (黄英治)


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