民族時報 第1160号(09.06.01)


【解説】核不要の関係正常化が近道/時期を逃さず対話で活路を

    6者協議から新たな協議枠への移行期

 米国の朝鮮半島政策をめぐって、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)とオバマ政権との間で熾(し)烈な外交戦が展開されている。現状を端的に表現するなら、「六者協議に替わる朝米間、多者間の新たな協議枠組みへの移行期」だといえる。これは単に参加主体の数の変化ではなく、質的変化をともなうものとなろう。

 問題は、オバマ政権が依然として、朝鮮半島での戦争計画である作戦計画5027にもとづく韓米合同軍事演習を強行し、また「北朝鮮の崩壊」に備えるとして作戦計画5029を策定するなどして、対北敵視政策を継続していることにある。

 北朝鮮は四月二十九日、「自衛的核抑止力の強化」として、核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を行うことを予告し、自力で軽水炉発電所建設を決定し、その第一行程として核燃料を自前で生産するための技術開発を始めると明らかにした。

 核実験は、いかなる国のものであれ、人類を滅亡に導く核兵器の増産につながる。「核兵器の廃絶」を宣言したオバマ大統領は、核超大国の元首として、北朝鮮が二度目の核実験に踏み切らないよう、「相互尊重および平等の精神」(六者協議九・一九共同声明の文言)で、敵視政策からの転換を行動で示す必要がある。

 つまり、北朝鮮が明らかにしたプロセスに、米国がどう対応するかが、新たな協議枠組みの性格と内容を規定することになるだろう。

 根本は、あくまでも朝米の二者間協議と合意だ。それは核・ミサイル問題を包括的に解決するため、結局は朝米関係を正常化するための協議枠組みになるしかない。米国が行動を起こさないかぎり、北朝鮮は、「自衛的核抑止力の強化」のプロセスに踏み出していくことになる。これは一九九四年から始まった「朝鮮半島の核危機」の経過から明白なことだ。放置すれば、情勢は米国が望むように進展しない。

 北朝鮮側にしてみれば、朝米関係を根本的に変えることができない枠組みなら、わざわざ米国と協議する必要がない。自ら決めた道を行けばいいという態度だ。

 こうしたなかで、米国がようやく動き出した。ボスワース対北朝鮮政策特別代表が、五月七日から中、韓、日を訪問した。北朝鮮にも行こうとしたが、拒絶されたと報道されている。北朝鮮側は、オバマ政権の確定した提案を持参せよということだろう。この動きと関連して、六者協議とは異なる形式の多者協議の構想が米国内から浮上している。また、オバマ政権がクリントン元大統領などの大物特使を派遣して、事態を打開するとの情報もある。

 北朝鮮側の態度ではっきりしているのは、朝鮮半島問題を協議する枠組みから日本を排除するという立場だ。〇八年十二月八日から十一日まで北京で開かれた六者協議の首席代表会議は、日本政府が李明博政権と連携して、「核無能力化の検証問題」を持ち出して問題を紛糾させ、第二段階における経済・エネルギー支援が中断した。このため六者協議は、「行動対行動」の原則において事実上、機能を停止した。「テロ支援国」指定解除で示された米国の政策転換を、行動で阻止したのが日本だといえる。そんな日本を、協議の枠組みに加える必要は一切ないということだ。

 ところで、オバマ大統領は、北朝鮮が人工衛星を打ち上げた四月五日、プラハで核兵器廃絶に関する演説をした。オバマ氏は、「米国は核を使用した唯一の核保有国として行動への道義的責任がある。核兵器のない世界に向け、具体的な方策を取る。米国の安全保障戦略上の核兵器の役割を減らし、他国に同調するよう求める」と述べた。これは、核使用を正当化してきた歴代の米政権とは一線を画すものとして、評価できる。しかし一方でこの演説の戦略は、二〇一〇年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に照準をあわせて、米国の核独占体制を維持しようとするものでもある。同じ演説でオバマ氏は、「北朝鮮が長距離ミサイルに利用できるロケットの実験を行い、再び規則を破った。違反は罰せられなければならない」と非難した。

 しかしオバマ政権は、ブッシュ政権のように北朝鮮との交渉を遅らせて、米国にとって事態の悪化を招いた事実を教訓とすべきだろう。実際に北朝鮮は五月二十五日、二度目の核実験を行ってしまった。いずれ大陸間弾道ミサイルを試射し、軽水炉発電所建設のために、北朝鮮に無尽蔵に埋蔵しているというウランの濃縮に着手するだろう。つまり、より手ごわい北朝鮮と交渉しなければならなくなる。

 つまり、来年のNPT再検討会議で核独占を維持するためにも、北朝鮮と交渉しなければ、オバマ演説の戦略は水泡に帰してしまうことになる。オバマ政権に時間の余裕はないといえる。逆に北朝鮮は前述のとおり、米国が対話と交渉をしないのなら、自らの計画にしたがって行動するだけだ、と考えている。

 いずれにせよ、数か月のうちに六者協議に替わる、朝米協議を基本にした、新たな協議枠が生まれることになるだろう。

 (禹英信記者)


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