民族時報 第1140号(08.07.15)


【講演要旨】朝米関係の歴史的な大転換/統一と正常化時代到来する

    朝鮮半島の統一と在日、そして日本

 金政夫(韓統連議長)

 六月二十七日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の寧辺にある核施設の冷却塔が爆破された。これは前日、北朝鮮が、「朝鮮半島の非核化のための六者(南北、中米露日)協議」の議長国である中国に核計画を申告し、米国のブッシュ政権が北朝鮮に対する初めての政治行動となる「テロ支援国家」指定の解除、対敵国通商法の適用除外を米議会に通告したことに対する、「同時行動原則」を鼓舞する象徴的なセレモニーだった。十五年前、米国の偵察衛星によって世界中に明らかにされ、「北の核疑惑」を象徴してきた寧辺の核施設の冷却塔爆破は、これまで一触即発の状況にあった朝米関係の歴史的大転換を象徴する光景だったといえる。

 一方で、六・一五共同宣言と十・四宣言を無視し、南北関係の進展より韓米同盟関係の強化を優先しようとした李明博政権の独善と事大主義的な政策と政局運営方式は、韓国民衆の厳しい批判にさらされ、燃え広がるキャンドルデモの炎は、いまや、民族の自主と民主主義を求める、全民族的な意志を誇示する象徴となっている。

 こうした一連の動きによって朝鮮半島の統一は、いよいよ具体的な日程にのぼったといえる。ここ数年以内に朝鮮半島の統一は実現する、そういう時代にきた。

 今回の「同時行動」を規定しているのは〇五年の六者協議「九・一九共同声明」だ。この共同声明は、朝鮮半島の非核化を平和的で検証可能な方法で実現するため、北朝鮮の核廃棄のプロセスに対応して、他の五か国がそれに見合う補償(エネルギー支援)を積み重ね、同時に、朝米、朝日関係を正常化していくという、包括的なタイムテーブルを定めたものだ。すでに初期段階を終え、いま第二段階を終了しようとしている。そしていよいよ、第三段階にはいることになった。この段階では六者の外相会談も予定され、核を廃棄する段階へと進入することになる。今回、北朝鮮は核計画についての詳細を申告した。今後はそれを廃棄すると同時に、それに見合う北朝鮮へのエネルギー支援を行い、朝米と朝日の国交正常化を実現する段階となる。

 ここで「核兵器はどうなるのか」という問題がでてくる。米国の強硬派や、「テロ支援国家」指定解除に強く反対した日本政府やマスコミ、「朝鮮問題専門家」は、「核兵器の廃棄なくして朝米、朝日の正常化はありえない」「朝米の正常化は困難」と主張している。それは「拉致問題の解決なくして日朝の国交正常化なし」という小泉前首相の主張と同じ論法だ。しかし、日本社会にまん延するこうした論法では、拉致問題にせよ、朝鮮半島の非核化問題にせよ、何ら解決の糸口を見出せなかったのが、否定しようのない現実だ。

 また、こうした主張と論法は、国交正常化をあたかも同盟関係を結ぶことであるかのようにハードルをあげて見せることで、人々の判断を誤らせている。国交正常化とは、同盟関係を結ぶこととは、完全に次元が異なるものだ。また実際においても、一方的に北朝鮮のみに利益になるということではなく互恵的なものだ。

 まもなく、フランスも北朝鮮と国交を結ぶということだ。するといよいよ、世界のなかで、米国と日本だけが、北朝鮮との関係が不正常だという異常な事態になる。グローバリズムといわれ、世界がつながりを深めているこの時代に、ましてや米日両国にとって中国と韓国との関係が非常に重要であり、一方、中国は北朝鮮と強い絆があり、南北関係は日ごとに強まっているなかにあって、米日だけが北朝鮮と国交がないという不自然なあり方は、むしろ対北朝鮮関係において米日が国際的に孤立していることを意味している。国交を結ばないことによって北朝鮮を外交的に孤立させ圧迫するという戦略は、すでに時代遅れで不合理なものになっており、国際関係上、米日にとって負担にさえなっているのだ。

 日本の場合、一九六五年の韓日条約で、韓国を朝鮮半島における唯一の合法政府だとした。それは米国の冷戦政策に追従して、韓国を社会主義ブロックに対抗する防波堤とするためだった。それが始まりだった。しかし、冷戦は終わり、時代はかわった。こんな状態はどう考えても不正常だ。この状況を正常に戻そうというのが国交正常化であり、それはそんなに難しいことではない。

 わたしはこう予見する。米国は核兵器を持った北朝鮮と数年以内に国交正常化するだろう。日本もまた、このあまりに不正常な関係、つまり、いまの世界のありかた、国際情勢の変化のなかで立ち行かなくなった関係を改善する必要が、日本の国益としても押し出されてくるだろう。要は、国交の正常化は究極のゴールではなくて、スタートにすぎないということだ。そのように見ると、朝米および朝日の関係正常化は、決して困難なことではなく非常に現実的だといえる。

 ブッシュ大統領は来年の一月に任期を終える。彼はそれまでに朝鮮半島の核問題で政治的成果をあげたいと願っている。ブッシュ大統領は昨年九月の韓米首脳会談で当時の盧武鉉大統領に、「今われわれは朝鮮戦争を終結すべきときにあり、それは可能だというメッセージを金正日国防委員長に伝えてほしい」と要請したことがある。

 その直後、第二回南北首脳会談で発表された「十・四宣言」の第四項目に、朝鮮戦争の「休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築していくべきだということに認識をともにし、これに直接関連した三者または四者首脳が朝鮮半島地域で対面し、終戦を宣言する問題を推進するために協力していく」ことが明記された。

 李明博政権は六・一五共同宣言と十・四宣言を無視している状態にある。しかし、今回の朝米同時行動は〇七年の六者協議の「十・三合意」に基づくもので、この合意は、翌日に発表された十・四宣言と密接にリンクしていた。したがって、「十・三合意」の履行の影響は、南北共同宣言の実践をいやがうえにも、李政権にせまることになる。実際、南北関係の最大の阻害要因は、米国が北朝鮮を「テロ支援国家」だとして、南北の経済交流・協力にたいしてさまざまにブレーキをかけ、妨害してきたことだった。しかし、このクサビがはずれたのだ。

 李政権が六・一五共同宣言と十・四宣言を支持し、実践するという方針を出せば、たちまち南北関係は復元し、より発展した段階にはいっていくことになるだろう。

 また、ブッシュ政権の任期中に朝米の国交正常化までは無理だとしても、十・四宣言に明記された朝鮮戦争の終戦宣言を、南北と米中首脳が朝鮮半島地域で対面しておこなうことは、現在も有効だ、ということだ。ブッシュ大統領は、これをしたいと考えている。この流れが逆転されるようなことがなければ、米国の次期政権――民主党のオバマ氏であれ、共和党のマケイン氏であれ――の間に、朝米関係は正常化するだろう。

 それは、朝日の国交正常化をまったなしのものとするとともに、南北の和解と統一を一層、それも急速に、進展させるだろう。

 南北の統一についていうと、北朝鮮の社会主義体制と、韓国の資本主義体制で統一が可能なのか、ということがいわれる。ここでも大切なことは、南北の統一は、国交正常化と同じように、それがゴールではなく、始まりであり、スタートにすぎないということだ。六・一五共同宣言の第二項目にある、南側の連合制と北側の低い段階の連邦制の共通を基礎に、ゆるやかに統一していく。つまり、南北が統一を宣言することに支障はなにもない。これを体制の統一と見てしまうと誤る。南側の進歩的な人びとの一部にも「統一は、韓国が社会民主主義的な福祉社会を目指し、北朝鮮が改革開放路線に転換することによって実現する」という考えがある。しかし、わたしはそうは思わない。この考え方は体制統一論であり、朝鮮半島が分断国家であるという特殊な歴史的事実をきちんと見ていないし、歴史が無限に変化発展する過程であるということを理解していないからだ。いまある体制を固定的にとらえ、どうすればひとつにできるかというふうに考えるのは誤っている。

 それぞれの独立民族国家を維持したままユーロという大きくゆるやかな連合を実現し、統合しようとしている欧州連合の動きがある。同じ民族である南北がゆるやかな形で統一を実現することは、現実的だといえる。そして、これはゴールではなく、スタートなのだ。ここからしか始まらない。なにが始まるかというと、真に民衆が主体となった自主的な統一国家の建設が始まるということだ。

 朝鮮半島の統一は、百年にわたる帝国主義の侵略と分断の歴史に終止符を打ち、自主的で独立した朝鮮民族の歴史がようやく始まることを意味する。これは同時に、朝鮮侵略から始まった日本の近・現代の反民衆的なゆがんだ歴史に終止符を打ち、アジア諸国との善隣友好を柱とした、新しい日本の歴史が始まることでもある。統一した朝鮮半島と日本との新たな関係が始まる、その過程で朝鮮の民衆と日本の民衆とがともに解放されていく、新しい時代が始まるのだ。

 わたしたちが目指すゴールとは、差別のない、平等で自由な社会、ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために生きる、そのような社会をつくっていくことだ。

 団結し、連帯を強め、大きく変化する情勢に主体的に参加していこう。


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