民族時報 第1128号(08.01.01)


【新春インタビュー】二極化の深化で社会不安高まる/民主化勢力、政治勢力化に失敗

          6・15共同宣言で平和への新年/協力で偏見除去し相互理解深化

    崔炳模・わが民族ひとつに運動本部理事長に聞く

 本紙は「民主社会のための弁護士の集い」(民弁)の元会長で、社団法人「わが民族ひとつに運動本部」(わが民族ひとつに)の崔炳模理事長にインタビューした。崔理事長は民弁会長として韓統連の名誉回復に尽力し、また六・一五時代の新たな市民参与型の統一運動である「わが民族ひとつに」の理事長として、多種多様な北側支援運動と、交流事業を精力的に展開している。崔理事長は一九四九年生まれ。ソウル大学法学部を卒業後、七六年に司法試験に合格、地方裁判所の判事などを歴任した後、一九八六年に弁護士を開業した。同年、「正義実践法曹人会」の創立に参加し、八八年に同会を民弁に拡大発展させ、二〇〇二年から〇四年まで会長をつとめた。現在、「わが民族ひとつに」の理事長のほか、社団法人「福祉国家Society」理事長、同「韓国非正規職労働センター」共同代表をつとめている。インタビューは昨年十二月五日、李政秀・宣伝次長がソウルで行った。(整理は本紙編集局。文責は編集局にある)

■民主化の到達点と課題

 ―八七年民主抗争以後の韓国社会の民主化運動を概括し、現時点での到達点と課題に対してお話ください。

 「難しい質問ですね。八七年以前はただ独裁打倒が唯一の運動目標でした。その当時は、民主化が実現して独裁政権が打倒され、大統領を自分たちの手で直接選び、自由で平等な選挙によって代表者を選出することができれば、ほかのすべてのことは、自然に解決されるだろうという考えに陥っていたと言えます。八七年の民主抗争以後、二十年の歳月が流れましたが、手続き的にはある程度民主化が達成されたと言えますが、実質的な側面では二極化が深化し、社会的にとても不安な状況に進んでいるのではないかと思います。九七年のIMF、外貨危機事態を経ながら、米国が主導する世界銀行、国際通貨基金の圧力に屈服して、すべてのものを開放してしまいましたからね。そのことが、ここにきて市場主義の極大化、政府の役割の最小化、労働の柔軟化などの状況と、二極化をもたらしたと思います」

 「二十代の青年層の失業率が昨年末段階で七・五%にのぼり、九百万人近い非正規職の問題をどのようにするのか、全社会に影を落としています。進歩政党によって社会福祉制度とかを拡充しようという主張が出てしかるべきですが、国家保安法がいまだに廃止されていない状況で、進歩政党はその役割を果たせません。結局、ハンナラ党や統合新党や、はなはだしくは文国現氏のような人さえも、保守の中での泥仕合をしています。そして、大統領候補らには政策論争がまったくありません。理念的にハッキリとした候補が民主労働党だけですが、民主労総がつくったという限界のため、支持が拡大していない状況です」

 「わが国で民主主義の問題を語るとき、進歩政党の出現、進歩政党の社会的枠組み、社会福祉制度の拡充といった問題を本当に深く考えるようになりました。今も、財閥やハンナラ党が規制を緩和しろといっていますが、政府が再び役割をもって、規制を強化すべき時だというのが、わたしの考えです。財閥と投機資本、外国直接投資に対する規制も必要です。中小企業はすべて倒産し、大企業は、すべて外国資本によって掌握されています」

 「現在の状況を見れば、民主化運動が形式的民主主義の達成だけを目標にした結果、実質的な内容においては、危機に直面したと考えます。そして、民主化運動、統一問題もその方向でアプローチしなければならないでしょう。わが民族全体の福祉向上、南側内部では庶民らの福祉向上に向かわなければならないと思います」

 ―先ほどお話いただいたことと関連すると思いますが、盧武鉉政権をどのように評価されますか?

 「無批判的にIMFを呼び込んだ金泳三政権が、資本開放を行ったことから始まり、金大中、盧武鉉政権がそれぞれ持続的に米国の圧力に屈しながら、新自由主義を受け入れる方向に進んでいきました。そして、外国の投機資本が入ってきて資本市場が混乱しました。当時、金融の世界化の風に乗って、東南アジアに投資しましたが、それがすべて紙くずになりました。外国為替の保有高が少なくなったという理由だけで通貨危機を受け入れましたが、その時、IMFに屈しさえしなかったら、一、二年の間に外国為替の保有高を回復して自然に解決される性質のものでした。総体的に見れば、金泳三、金大中、盧武鉉政権が実際に過去の民主化運動の結果、誕生しましたが、民主化運動勢力は自らの代案勢力をつくることができず、いったん民主化をかち取った後には、過去の古い政治人らに主導権を渡してしまったということです。過去の政治人らは新たな枠組みをつくり出すことができず、非正規職の急激な増加、貧富の格差が深化しました」

 「これらの政権は、経済の安定化、いわゆる自主的経済、収入、平等、分配に神経を使うことができず、結局、李明博のような候補に支持率が集まる社会的雰囲気をつくってきたと思います」

■6・15時代の意識変化

 ―韓統連の名誉回復、過去事件の真相究明問題などに尽力されていますが。

 「金大中政府になってからは、スパイでっち上げによる拘束者の釈放、四・三事件など、過去事件の真相究明問題の再評価作業を行いましたが、韓統連問題に対してだけは、おそらく金大統領自身が関係していたためか、まったく関心が傾けられませんでした。韓統連は、民主化運動の影響を直接国内に及ぼし、日本で困難な状況で運動を行ってきたのに、そのままにしておくのは問題だと思いました。盧武鉉大統領になってから、二〇〇三年五月にわたしが民弁の会長になり、林鍾仁議員が副会長でした。林議員から、その問題を放置していてはいけないのではないかと提起があり、相談して『海外民主人士帰国保障と名誉回復』を目的に活動をはじめました。幸いにも、当時の国情院長からもかなりの支援をしていただき、青瓦台でも同意をして実現できたものです」

 ―南北首脳会談と六・一五共同宣言の発表によって開かれた和解協力時代の社会と世論の変化、第二回首脳会談と十・四共同宣言の意義と課題に対して、どのようにお考えですか?

 「六・一五共同宣言は、わが現代史において分岐点といえる、重要な宣言です。六・一五共同宣言後わずか七年あまりで、それ以前の状況と比較すれば完全に世の中が変わってしまいました。南北間を往来する人の数や、経済協力、南北間の認識問題など。昔は、中国の民航機が不時着したことを北の攻撃と誤認報道し、戦争が起こるとわめきたてながら、ラーメンまで買いだめする状況だったのに、昨年は、核実験をしたといっても身じろぎもしませんでした。まさに、六・一五宣言で南北交流がもたらした平和に対する信念があったためです。今も、保守冷戦主義論者らは、北を無条件支援することだと騒いでいますが、国民が平和に対する確信と信念を持つことで享受する心理的安定感、経済的な安定、投資におよぼす影響を計算すれば、何百兆億ウォンを超えるでしょう」

 「十・四南北首脳宣言は、経済的な協力範囲を大幅に広げ、協力の次元を首相会談にまで高めました。西海の北方限界線問題を、西海平和協力地帯設置という絶妙な合意をした点も評価できます。わたしが感じたことは、第一に、わが民族の運命はわが民族自らが決定していくという、自主的な解決意志を内外に明らかにした宣言だということです。なぜなら、六・一五共同宣言の固守と具現、わが民族同士の精神にもとづいて統一問題を自主的に解決するという合意も重要ですが、休戦体制の終息と恒久的な平和体制を構築することに認識を同じくし、直接関連する三者または四者の首脳が朝鮮半島地域で会って終戦を宣言する問題を推進するため、協力していくという点です。この問題は、これまで米国や中国の言うとおりに振り回されてきましたが、今はそうではなく、われわれが終戦宣言を主導し、あなた方はここに来て同席して宣言しよう、と決めたということですから。南北の問題はもう振り回されることはないということを、南北の首脳がお互いに合意したものではないかと思います。もう一つは、朝鮮半島でどのような戦争にも反対する、としましたが、わが民族同士が戦わないのはもちろん、米国や中国やロシアもわが国に来て戦争挑発をするなという趣旨の表現ではないでしょうか。そうした点から、過去のどのような宣言や国際的な合意とは違い、わが民族の運命は自らが決定するという意思を、内外に明らかにしたことが重要だと思います」

 「第二に、民族の利益と福祉を最も重要な価値とするとし、南北間の問題や対外的な問題をここに従属させるとする、民族優先意志を表明したと評価できます。また、重要だと思うことは、朝鮮半島の核問題の解決のため、六者協議九・一九共同声明と二・一三合意が順調に履行されるよう、共同で努力すると合意した点です。六者協議の内部で、南北の協力を公開的に明らかにしたということです。米国の立場は、韓国と北を対立させておいて、ほかの国々をその間に立たせ、その対立状態を維持しながら米国の発言権を強化しようというもので、そうした米国の意図とは関係なく、核問題であれ、経済問題であれ、われわれの利益のためにわが民族同士が協調しようという表現ではないかと思います」

 「八項目で海外同胞の権利と利益のために協力するということも、民族の利益を優先するという表現です。南北首脳が随時会うことにし、首相会談の合意、軍事的敵対関係の終息と平和体制の構築、南北経済共同委員会の設置、経済共同体建設など、全体的に見れば南北間の統一過程においての一種の国家連合、南北連合の準備段階に入っているのではないかと思います」

 「そして、平和協力地帯の設置、経済特区の建設、鉄道建設、道路建設に合意した部分は、朝鮮半島平和体制の実現、南北経済共同体建設をひとつひとつ切り離して考えることはできない、統合した過程だと思います」

■妨害勢力と国家保安法

 ―六者協議の進展と十・四共同宣言の合意にもかかわらず、日本政府と米国内の妨害勢力が存在し、韓国社会に今も国家保安法が存在していますが。

 「六十年間の反共教育、冷戦教育がいまだにわたしたちの社会で大きな威力を持ち、わが国に社会党や共産党が存在できない時代状況をそのまま反映しており、それが国家保安法を存在させていると思います。もう一つは、独裁政権が四十年間、たゆまなく国民たちに虚偽の意識を注入してきました。米国がいなければ、北が南侵してきて、わたしたちは崩壊する、北の軍事力はわれわれの二倍を超える、こうした嘘です。軍事専門家らは、南側の軍事力は北の二倍から六倍の強さだと言っています。ですから、わが国に米軍が駐屯する理由はありません。はなはだしくは、米軍司令官さえも、九一年に米上院軍事委員会に提出した報告書を見れば北朝鮮の軍事力は、到底軍事力とは言いがたい水準だと語り、今回もベル駐韓米軍司令官が、今年の三月初めに米下院軍事委員会でそのように証言しました。にもかかわらず、米軍が必要だと主張するのは、独裁政権時代にくり返してきた嘘が、今もこの社会に通用しているからです。米国は、米国の国益のため、覇権的秩序維持のために駐屯し続けているのに。南と北が和解、協力して、どんな場合でも米国の策動が介入するすきを与えなければ、米国にとっても結局は、北と南の双方を友人にすることが自国の利益になるでしょう。米国の圧力を説得し防御して、ある部分は受容しながら適切に誘導できる方法は、南と北がまず和解し結合することです」

 「日本に対する問題は、現代史を少し長いスパンで見れば、南北が分断された原因は一次的に日本、二次的に米国にあります。歴史的過程で見れば、日本が植民地支配を行ったがゆえに、日本は民族分断問題に対しても大きな責任を負っています。しかし日本は、南北が和解し統一することを望んでいません。なぜなら、東アジアで最も強力な競争国家が登場しますからね。南と北の対立状況こそ、日本が東アジアで発言権を強化できる最も良い環境だからです。対日関係においてもまた、南と北が同じ民族として最大限にお互いを理解し接近することが、最良の対抗方法だと思います」

 ―六・一五共同宣言履行のための民間次元の実践運動である「わが民族ひとつに運動本部」はどのような活動をしていますか。

 「わが民族ひとつに運動本部は、全国二十七の市民社会団体が創設に向けた論議を経て、二〇〇四年二月に創立しました。元老のキム・ジョンベ先生が理事長に推戴され、わたしが共同代表として入ったのですが、十一月にキム先生が健康上の理由で辞任されて、周囲の人たちの勧めでわたしが理事長を引き受けることになりました。わが民族が繁栄する道は、ともに協力して統一の道に進むことこそが唯一の合理的な道だと考えていましたので、引き受けることになりました。わが民族が外勢によって分断されたのだから、当然、統一しなければならない。これが一次的な理由ですが。現実的な理由もあります。民主化されて十年になりますが、依然として国家保安法が存在し、韓総連の学生らが追われている状況、また南は経済発展が思うようにいかず、北は貧困に苦しみながらも、南六十万、北百万の大軍を持って対立し、軍備競争のために国防費を大量に使い、米軍駐屯、イラク派兵延長など、結局これらは、南北対立関係から派生するもので、民族の苦痛です。わたしたちが統一してこそ、これらのことが根本的に解決されるから、統一が重要だと思うんです」

 「経済的に見れば、人口四千七百万人では市場が狭いです。北とあわせれば七千万人という内需市場になるじゃないですか。なにか商品をひとつ開発しても商売になりますから。中小企業が広い市場を背景にして成長でき、また中国と交流、南北の鉄道が連結されれば、物流費用が三分の一に削減できます。輸出におけるものすごい利点ですよ。輸入においてもそうです。だから統一こそが最も利得の高い商売です。わが民族ひとつに運動本部が南北間の交流を推進し、活性化を支援するのは、統一に向かう道の前段階だからです」

■「わが民族ひとつに」の活動

 ―わたしたちもパン工場事業本部に参与していますが、わが民族ひとつに運動本部の具体的な活動と成果についてお聞かせください。

 「ソウルに中央本部があり、会員団体で構成された全国組織です。市、道単位で、蔚山、釜山、昌原、光州、全州、仁川、ソウル、大田支部があり、江原道、済州道が現在推進中です。中央本部の事業と地方地域本部の事業がそれぞれありますが、経済的には独立採算制です。中央本部事業は、パン工場事業本部、豆乳事業本部、南北教育協力推進委員会を構成、現在は養豚場を推進中です。蔚山では、麺工場事業の支援、釜山では、金日成総合大学生命科学部に現代的な抗生剤工場を設立しました。光州では、南の農民を助ける目的もあわせて、統一のコメを送り、仁川本部は建築資材、道路舗装材などをたくさん送り、全州本部は事業を構成中です」

 ―そうした事業を通して民衆意識の大きな変化が起こったと聞きましたが。

 「過去と比べれば、天と地の差です。北の人は本当に純粋で好感が持てる、話が通じるといった話をします。そして北側の人たちもとても柔軟になりました。これから十年後には、今では想像もできない大きな前進があると思います。交流協力過程で偏見が除去され、お互いの政治体制を理解するようになるのではないかと思います」

 ―朝米関係の変化、十・四共同宣言以後の南北交流、和解協力運動の展望と課題、その運動の中で韓統連に対する期待があれば。

 「米国内の強硬主義者らは、米国の今の対北政策に反対しています。南北が十・四共同宣言で明らかにしたように、協力関係を継続強化して経済分野を広げていけば、米国も結局は認めざるをえないでしょう。それを南側が積極的に推し進め、協力し、米国にも要求しなければならないと思います。そうすれば、朝米関係も過去とは完全に異なる国家対国家として、平等な関係になっていけると思います」

 「また、政府で政経分離の原則を確立し、南北間が政治的に硬直しても民間が支援することを干渉するなということです。そうした過程がもう少し広がり、朝米関係も順調に進めば、南北間の共同投資や経済特区開発、西海平和協力地帯の設置、共同漁業、共同鉱業の開発などが飛躍的に発展できるだろうと思います。十年後くらいにはヨーロッパ式の経済共同体まで期待できるんじゃないですか」

 「韓統連が一九七三年から三十四年間の長きにわたって苦労してこられたので、これからは良い時代が来なければならないのですが、問題は日本での在日同胞問題自体と関連しています。次回の首脳会談で在日同胞問題に対する包括的な合意がなされればと思います。民団と総連が対立している状況を解消する特段の方法はないかと考えます。韓統連がこの間、反独裁民主化運動と祖国統一運動を同時に行ってきましたが、今は統一運動にまい進しながら、総連と民団を連結する架け橋の役割を行い、在日同胞の和合と団結が歴史的に実現することを期待します」

 ―長時間、ありがとうございました。


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