民族時報 第1080号(05.12.01)


【寄稿】北が段階的核放棄提示/米は「行動対行動」守れ

    共同声明採択後の6者協議の展望

 北川広和(日韓分析編集)

 九月十九日に採択された六者協議共同声明は、間違いなく歴史的文書である。九四年の米朝枠組み合意以上に重要ともいえる。というのは、米朝両国を中心としながらも、朝鮮半島情勢に深くかかわる中国、ロシア、日本、そして当事者である韓国が含まれているからである。

参加各国が共同声明を実行に移せば、朝鮮半島の非核・平和が実現できるし、さらには北東アジア全体の非核・平和さえ導き出すことが可能だろう。共同声明が今後どのように具体化されていくのか、大いに注目される。

その第一歩が踏み出された。十一月九日から十一日にかけて北京で開かれた第五回六者協議である。

 協議では、朝鮮側代表の金桂寛外務次官が「核放棄を段階的に行う用意がある」として、@凍結A放棄B検証CNPT復帰の四段階に分けて実行するので(のちに韓国側が、提案は五段階だったと明らかにしている)、米国は同時並行的に各段階に応じた対応措置(見返り措置)をとる義務がある、と主張した。

 これに対し、日本側代表の佐々江・アジア大洋州局長が「三つの作業部会をまず設置すべきだ」と主張した。@核廃棄・検証A経済・エネルギー支援B地域安保協力の三分野に分けて部会を置くべきだとの提案である。

 どちらの提案が共同声明の趣旨に沿った合理的で正当な提案だろうか。時系列的に分けるべきか、テーマ別に分けるべきか、ということになる。やはり段階別に分けて、参加各国がそれぞれ義務を履行し、全体的にクリアできてから次の段階に移るという段階別をベースとすべきだろう。先にテーマ別に分けてしまうと、作業部会ごとに進度が異なり、同時進行が困難になる恐れがある。つまり、テーマ別では、共同声明にある「行動対行動」の原則を満たすことが不可能になる、ということである。テーマは、段階ごとに設定しなおす必要も出てくるだろう。

 協議のなかで各国代表は、ロードマップ(行程表)の策定を急ぐべきだと異口同音に主張した。ところが、作業部会の優先的設置はロードマップにはならない。段階別に分けることこそがロードマップ作りの基本である。日本側提案は一見もっともらしいが、朝鮮の核放棄を先行させ、日米など参加各国が実行すべき経済支援などの義務履行を遅延させようとする方便に見える。

 それなりの提案をした日本以上にひどかったのが米国である。ヒル国務次官補は、相変わらず「先核放棄」を主張するばかりで、何ら提案をしなかった。「米強硬派が、ヒル代表がこれ以上譲歩を重ねないよう目を光らせている」(十一・一二読売新聞)からといわれる。十月六日、米下院外交委員会のハイド委員長(共和党)は、六者協議共同声明について「『検証可能で後戻りできない完全な核放棄(CVID)という米国の従来の主張に言及しなかった』と批判し」、「『朝鮮側が二〇〇二年に認めた高濃縮ウラン計画への言及がない』などとして強い不満を表明し」、「『ガソリン価格が高騰している時に、朝鮮に重油を供与するというなら、われわれは悲鳴をあげるだろう』などと述べ、世論の理解を得るのは困難だと警告した」(十・八日本経済新聞)という。

 しかし、米国内がどうあれ、何ら前向きな提案をしなかったヒル代表の態度は、明らかに六者協議の合意に反している。

 十一月十七日、国連第三(人権)委員会で、朝鮮の人権状況を非難する決議が賛成多数で採択された(賛成八十四、反対二十二、棄権六十二)。この決議は十二月中に国連総会本会議で採択される見通しである。

 初の本会議での採択を狙って提案したのはEUである。EUは、共同声明の採択に至った六者協議に何ら関与できなかったことから、朝鮮半島情勢へのコミットメントを確保しようとして、国連非難決議を持ち出したものである。このEU主導の決議案に米国が賛成したのは、六者協議共同声明が米国の思いどおりにならず、むしろ多くの譲歩を迫られる事態となっているためである。

 六者協議共同声明の実現、つまり朝鮮半島の非核・平和の実現は、ひとえに米国とこれに追随する日本とが「行動対行動」の原則を受け入れて実践するかどうかにかかっている。


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