民族時報 第1051号(04.12.01)


【トップ記事】在日同胞社会の和合に向けて/不当処分撤回で過去清算を/本国の民主化に学ぼう

    韓統連、民団中央本部に提議書

 在日韓国民主統一連合(韓統連、金政夫議長)は十一月十八日、在日同胞社会の和合のために民団中央本部に対する提議書をまとめ、金宰淑・民団中央本部団長あてに伝達した。

提議書は@在日韓国人社会の分裂と不信と対立を深めてきた過去の歴史を清算し、過去の処分などの不当性を認め、それを明らかにすることA在日韓国人を代表する唯一の団体であるという名目で、他の民族団体を排除するのでなく、他団体の自主性を尊重し、和合の精神で連携し協力関係を作り上げていくことB六・一五南北共同宣言の精神にもとづく在日同胞社会の和合の促進と、在日同胞の権益を守ることを最優先し、本国政府に対して自主的立場を堅持すること、の三項目が盛り込まれている。

提議書は、「本国で民主化の流れが定着し、かつて『利敵行為』『暴動』と非難された事件の数々が、民主化運動として公式に評価され、政治的に迫害された人々に対する補償まで行われており、そのことが、本国社会の和合を推し進め、社会発展の大きな原動力となっている」と指摘しながら、「在日同胞社会もまた、本国の状況から多くのことを学ぶべきである」と主張している。さらに提議書は、深刻な危機に直面している在日同胞社会に新風を巻き起こし、在日同胞社会の和合を促進するためにも、民団が韓統連と互いに連携し協力する立場を明らかにすることを求めており、民団中央本部の真しな対応が望まれる。

全文は以下のとおり。

民団中央本部に対する提議書

 わたしたち在日韓国民主統一連合(韓統連)は、一九七三年八月、韓国民主回復統一促進国民会議(韓民統)の発足以来、韓統連への組織改編(八九年)を経ながら、三十余年にわたって、祖国の自主的平和統一と本国社会の民主化、在日同胞の権益を守るために、一貫して運動を展開してきました。

 この間、韓半島をめぐる状況は大きく変化し、本国社会の民主化も飛躍的に進展しました。しかし、その一方で、過去の歴史が清算されないまま、わたしたち韓統連をはじめ海外における民主化運動が正しく評価されず、旅券の発給についても不当に制限されてきました。

 このような状況を打破するために、国内外同胞と日本の良心的な人々によって、韓統連の名誉回復と自由往来の実現に向けた努力が積み重ねられてきました。

 こうした尽力によって、わたしたちは先般、本国政府より正式旅券の発給を受けて、約百五十人の代表団による故国訪問事業を行いました。

 わたしたちはソウル、光州での公式行事を成功裏に行い、金大中前大統領をはじめ、政党、社会団体などを表敬訪問しました。さまざまな場で、各界各層の人々がわたしたちの訪問を熱烈に歓迎し積極的な交流を約束してくれました。

 事実を歪曲した民団組織局長談話

  ところが、民団中央本部は十月八日、韓統連に対する入国許可措置が不当だとする内容の「組織局長談話」を発表し、多くの在日同胞と国内同胞のひんしゅくを買っています。

 談話では、七八年の大法院における「反国家団体」認定に基づいて「韓統連を敵性団体と規定し、その代表的人士を本団から除名した」などと事実の意図的な歪曲まで行っています。しかし、すでに民団中央本部は七二年に除名・停権などの不当処分を乱発して民団民主勢力を民団から追放し、七三年の韓民統結成以来、一貫して敵対行動をとりつづけ、七七年には、東京・上野の池之端文化センターで開催された「海外韓国人民主運動代表者会議」を妨害するために、全国から団員を動員して会場に乱入させるという暴力事件までひきおこしているのです。この事件では、会場を警備していた韓青盟員らが重軽傷を負い、民団側の多くの青年らが刑事罰に処されています。このような事態までひきおこした張本人である民団中央本部が、七八年の大法院判示に基づいて韓統連を「敵性団体」としたというのは、過去の不祥事と自らの責任を隠ぺいしようとする姑息(こそく)な態度といわざるを得ません。

  「反国家団体」規定の不当性についていうならば、金大中前大統領との懇談で韓統連の名誉回復が実現したということが強調されました。一九八〇年の「光州事件」を背後操縦したとして投獄され、「反国家団体である韓民統(韓統連の前身)の首かい」として死刑を宣告された軍事裁判の再審で、無罪が宣告されたことによって、韓統連に対する汚名もそそがれたと明言されたのです。元来、七八年の大法院による「反国家団体」判示は、在日同胞留学生に対するスパイ事件に関して、具体的根拠も示すことなく唐突に行われた、きわめて政治的な内容のものでした。このことが、金大中先生を政治的に抹殺することを目的としていたことは今や誰もが知っている事実です。それであるにもかかわらず、今日にいたるまで韓統連を「反国家団体」ときめつけ、旅券の発給を拒否してきたこと自体が不当なことなのです。

 在日同胞社会の和合のため過去の不信と対立を克服すべき

  故国訪問の間、行く先々でわたしたちが強調したのは、国内同胞がより一層在日同胞問題に関心を持ち、国内外同胞が相互理解を深め、祖国の平和・統一・繁栄のために寄与していこうということでした。そして、韓統連が在日同胞社会の和合のために尽力し、祖国と日本、在日同胞をつなぐ架け橋としての役割を果たしたい、との所信を繰り返し表明してきました。

 わたしたちは在日同胞社会をとりまく現状がきわめて厳しいものであることを認識しています。同化帰化する同胞が急速に増大し、三世・四世など若い世代の民族意識の希薄化などによって、在日同胞社会の崩壊の危機が云々されるほど事態は深刻です。また、日本経済の長びく不況によって在日同胞は経済的に相当な困難に直面しています。さらに、歴史歪曲などで顕著なように、日本社会の保守傾向の加速化は在日同胞に対する差別排外意識を助長しており、在日同胞の命と人権すら脅かされているのが現状です。このような現状を克服するためには、何よりもまず、在日同胞社会の和合を促進することが必要です。

 在日同胞社会の和合のためには、すべての民族団体が過去の不信や対立を克服して和解し、六・一五南北共同宣言の精神にもとづいて、幅広く連帯し、団結することが必要です。 在日同胞社会の不信と対立は、民団と総連間の問題だけではありません。本国の権威主義的政権とそれに反対した反独裁民主化運動の対立が在日韓国人社会にも反映し、ついには在日韓国人社会の分裂という事態にまで至ったことは多くの同胞の知るところです。

 にもかかわらず最近にいたるまで、民団だけが在日韓国人を代表する唯一の団体であるとして、韓統連の存在を「敵性団体」とみなし、在日韓国人社会から排除しようとしてきたことはきわめて遺憾なことといわざるを得ません。

 本国政府の干渉による在日韓国人社会の分裂

 韓統連の前史は、民団民主化運動にあります。一九六〇年の四月革命と翌年勃発した軍事クーデターに対する評価をめぐって、民団は、軍事政権を全面的に支持する民団中央派と、これに批判的な民団有志懇談会、在日韓国青年同盟(韓青)、在日韓国学生同盟(学同)など民団民主勢力派に二分されました。それでも、入管法改悪阻止闘争など在日同胞の権益擁護のために民団内で最も献身的に闘ったのは、民団民主勢力であったことは、当時、民団内にいたものにとっては周知の事実です。ところが、七一年の民団中央大会では、有志懇談会が推す中央団長候補の優勢が予想されていたにもかかわらず、「録音事件」による露骨な選挙干渉によって落選することになりました。金在権公使(当時、韓国中央情報部幹部、七三年八月八日に起こった金大中先生ら致事件の現場責任者)が、「有志懇談会陣営の某幹部が朝総連幹部と内通して反国家的発言をした密談の録音テープがある」という、事実無根の「爆弾発言」を行ったことによって選挙局面を逆転させたのです。この事件を契機に、有志懇談会は民団自主守護委員会に改編され、より熾(し)烈に民団民主化運動が展開されることになります。このような動きに対し、中央執行部は、除名、停権などの不当処分を乱発し、七二年にはついに、韓青、学同の傘下団体認定取り消しなど、民団民主勢力に対する追放処分を強行したのです。民団中央に対する批判は「反民団・反国家・利敵行為」である、という理由で行われた民団からの追放処分は、本国への往来の道が閉ざされ親族の臨終にも立ち会えないなどの悲劇を生み、婚姻や出生届など戸籍への申告すらできないなど、事実上、故国からの追放を意味する過酷なものでした。

 こうした状況のもとでわたしたちは、在日同胞の権益を守るためにも祖国の民主化と統一が必要であるという結論に至り、当時、海外での亡命生活を決断した金大中先生とともに、七三年に韓民統を結成するにいたるのです。

 韓民統結成以降も民団は、本国民衆の反独裁民主化運動を支持し連帯するわたしたちの活動に対して、「反政府・反国家・利敵行為」であるときめつけ、「朝総連の手先」「北のスパイ」とひぼう中傷しながら、多くの団員を動員して反対行動を組織し、在日同胞社会に深刻な不信と対立を助長してきました。

 過去を清算し在日同胞社会の和合と発展を

  しかし、いまや時代は大きく変わりました。本国ではねばり強い民主化の努力で独裁政治に終止符がうたれ、民主化の流れが定着しています。かつて、「利敵行為」「暴動」と非難された事件の数々が、民主化運動として公式に評価され、政治的に迫害された人々に対する補償まで行われています。そのことが、本国社会の和合を推し進め、社会発展の大きな原動力ともなっているのです。

 在日同胞社会が大きな転換点に立っている今、わたしたちもまた、本国の状況から多くのことを学ぶべきであると思います。それは、過去の不幸な歴史を反省し過去を清算することで、主義主張の多様性を認めて、在日同胞社会の和合を促進することです。

 在日韓国人社会の分裂は、当時の権威主義政権による民団への圧力と干渉が大きな要因となりました。そうした意味で、民団もまた、本国政府の干渉による被害者であるとわたしたちは考えています。とりわけ、「録音事件」は、当局機関員による明白な民団組織に対する干渉行為であり、本国で進められている過去史清算事業の一環として、必ず究明されなければならないでしょう。 わたしたちは、南北の首脳が民族と全世界の前に発表した六・一五南北共同宣言の精神のもとに、民族団体は組織の大小を問わず、幅広く和合し連帯することを訴えます。

 そのためにも、民団が自助努力によって不幸な歴史を清算し、在日同胞社会の和合と祖国の平和・統一・繁栄、在日同胞の権益擁護のために、韓統連と互いに連携し協力する立場を明らかにすることを切望するものです。

 このような立場で、貴団体に対して以下のように提議します。

 一、在日韓国人社会の分裂と不信と対立を深めてきた過去の歴史を清算し、過去の処分などの不当性を認め、それを明らかにすること。

 一、在日韓国人を代表する唯一の団体であるという名目で、他の民族団体を排除するのでなく、他団体の自主性を尊重し、和合の精神で連携し協力関係を作り上げていくこと。

 一、六・一五南北共同宣言の精神にもとづく在日同胞社会の和合の促進と、在日同胞の権益を守ることを最優先し、本国政府に対して自主的立場を堅持すること。

 わたしたちは、多くの民団同胞が本国社会の発展のために物心両面で大きな貢献をしてきたことを知っています。また、在日同胞の権益を守るために、地域で献身的に働く民団同胞がいることを知っています。わたしたちは、そうした民団同胞に心から敬意を表するものです。

 民団中央本部が、以上の提案を真しに受け止め、民主主義と和合の精神をしっかり打ち立て実践するならば、在日同胞社会に新風が吹き、活気を取り戻す大きな契機となることでしょう。

 二〇〇四年十一月十八日

 在日韓国民主統一連合


[HOME] [MENU] [バックナンバー]