民族時報 第1046号(04.10.01)


【読書案内】「親日」のあくなき追及

    韓国現代史ー韓国はどういう国か(韓洪九著、平凡社)

 掛け値なしにおもしろく、視野が広がり、思考が深まる本には、なかなかお目にはかかれない。だから、それに出会えた喜びを、だれかに伝えたい。本書はそんな気にさせる本なのである。 

 本欄が読者の目に触れるころには、韓国国会では国家保安法廃止問題とともに進歩と守旧の激突案件である与党提案の「親日反民族行為真相究明特別法改正案」の処理がヤマ場を迎えているかも知れない。 

 なぜいま、半世紀以上も前の「親日反民族行為の真相究明」なのか。どうして、それが与野激突の原因となるのか。その答えが本書の主旋律となっている。それは繰り返し奏でられる。さまざまなバリエーションで、あっと驚くような場面と場所、隔絶したような時に、米国がらみの問題にも、「親日」が、その血走った目と、血塗られた手をともなって、頭をもたげる。

 「韓国人はしばしば韓国社会が抱えている多くの問題が日本の植民地支配に由来すると恨む。……日本のせいだけにするのは正しくない。日本人が残していった否定的な遺産を清算できなかったのはまさしくわれわれ韓国人であり、ときにはわれわれ自身がそうした否定的な遺産を再生産してきたためでもある」

 ここから明らかなように、本書は民主化時代の歴史家による、痛切な自己反省をともなった主体的な「歴史の話(イヤギ)」である。

 といって堅苦しい「歴史の本」ではない。ヤクザから大統領、愚劣な裏切り者から大義に殉じた烈士、徴兵制と志願制、立憲君主制から共和制まで、ひいては「糞も味噌」もまな板にのせて縦横無尽に論じている。語り口は鮮やかだ。圧倒的な知識に裏打ちされた豊富な史実が、国境に限定されず、世界史的な広がりのなかで、他国との比較や批評的表現をともなって提示される。そして韓国現代史、ひいては朝鮮半島の現代史に埋葬された無辜(こ)の死者たちが、呼び出される。

 「清算されなかった過去は繰り返されます。……過去の清算は過去の問題ではありません。現在と未来のために、現実につながる過去を直視し、それと闘うことです」

 本書のなかでもとくに美しいこの一節の後には、やはり「親日」問題が指摘される。それを日本語で読む者らは、「天皇制」の問題を思い浮かべなければならないだろう。韓国の「親日」、日本の「天皇制」。「親日特別法」が制定される韓国、天皇制が憲法第一条に明記された日本。重い重い課題を、一方は解こうとし、他方は完全に棚上げしようとしている。

 なお、本書の続編が同じ出版社から来春にも出版されるという。最後に、この朗報をつけ加えておきたい。(英)

  (発行・平凡社 定価・二千四百円)


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