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「わが祖国統一論」はじめに

 はじめに

 発刊に際して

 八・一五の祖国解放からすでに四十数年が過ぎて、半世紀に迫ろうとしている。一つの祖国の懐のなかで生れ育つことのできた最後の世代、八・一五が真の解放ではなく、民族分断という新たな不幸につながっていく意外な現実を目撃し、がく然としたその日の少年らも、すでに老年期に入っている。彼らの額に刻まれた深いしわは、長い分断時代を生きてきたわが民族の苦悩と恨(ハン)をそのまま表したものである。私もその世代の一人である。

 この本は、私が日本で民主・統一運動に身を投じて活動してきた過程で常に考え、語り、時には論文にして発表したものを、整理し一つにまとめたものである。またここには、統一に向けた実践的論議が進むよう、統一運動勢力の中から出されたさまざまな主張も、幅広く紹介することに努めた。そのため、本書のなかで展開される問題は、読者によっては特別目新しいものに感じられないかもしれないが、統一運動を進めるうえで一助になれば幸いである。

 この本は、次のような立場に基づいている。

 民族とは血筋を同じくし、同じ言葉を使う人びとの集団であり、絶対に分かれては生きることのできない運命共同体であること、民族があり祖国があってこそ主義、主張もあり、いかに思想や体制が異なるといえども、南と北のわが同胞は一つにならざるをえないということである。

 

このことをあらゆる角度から検証しようとした。そのため、多少学術的となった個所もある。しかし総合的な検討が必要と思い、踏み込んで論じることにした。拙い文だが、祖国と統一の熱い思いから出たものであることを理解して読んでいただきたい。

二十世妃の最後の年代である九〇年代を迎えた今日、内外情勢には予想しえなかった出来事がたて続けに起きている。昨日の出来事がきょうは新たな意味に評価しなおされ、明日にはまたどのような変化と衝撃約な事態が起こるか分からない。この本が読者の手元に届くころには、本書で取り扱った問題のうち、新たに論議しなければならない場合もありえると思う。このことについて、あらかじめ読者の了解を請いたい。

執筆中に、ソウルで開かれた南北高位級会談で劇的な妥協が成立し、「南北間の和解と不可侵および交流・協力に関する合意書」が採択されたという、喜ばしいニュースが飛び込んできた。われわれの歴史は紆余曲折や起伏はあっても、確かに自らの進むべき道に沿って前進している。今年は七・四南北共同声明の発表から二十周年にあたる年であり、統一運動で歴史的な転換が望まれている。統一をめざして活動している皆さんが、運動で大きな成果を得られるよう心から望んで止まない次第である。

 引用した資料のなかで出典と注釈が必要と考えられるものは、各章の末尾に付記した。

 一九九二年四月

                                        著者

 

 日本語版の発刊に際して

 

 ハングル(韓国語)版の発刊から二年が過ぎた。ハングル版が出た直後から日本語版の出版も頼まれていたが、諸般の事情で延び延びになった。今回、刊行委員会の手によって発刊出来るようになり、ほっとした気持ちである。

 昨年来、韓(朝鮮)半島では、北韓の核問題をめぐって米国と北韓とのあいだで激しい対決が続き、一触即発の危機が何度も繰り返された。そして、今年の六月には戦争の危険が頂点に達していた。これまでの激しい対決のなかで、一般の市民が接するマスメディアでは常に米国が「保安官役」で、北韓は「悪役」として描き出されていた。

 しかし、北韓の核問題についての議論は、真実に基づいたものであるというよりは、北韓を裸にして完全屈服を強いる覇権主義的なやり方で進められたことを指摘しなければならない。

 それは米国とIAEAが、核査察において唯一、北韓に対してだけ差別的な「二重基準」を適用し、それをテコにして北韓を攻めたてたことによく表れているといえる。北韓のNPT脱退を招いた直接の原因も、まさにこの二重基準の押しつけにあった。

 なぜ米国は北韓に対して、このように強圧的な態度をとったのか。その背景には北韓の抹殺という米国の基本政策があり、核問題はその表れにほかならなかった。つまり、米国はソ連など共産圏の崩壊後、軍部を中心に、いち早く北韓など「不服従国」に対する抹殺計画を立てていたのである。

 例えば、米国防総省は議会に提出した総合年間戦略報告書で、九一年にイラク、リビア、キューバ、北韓の四か国を抹殺の対家国として挙げ、さらに九三年度の報告書では、イラクなどは除外しながら北韓だけは残していた。

 米国のこのような対北韓政策は、当然のこととして韓国政府の統一政策にも影響を政ぼすことになった。韓国政府は、このころから吸収統一の方向をより鮮明に打ち出すことになる。そして昨年秋には、韓米両国の関係者らによって、「北韓を武力で占領し軍政を敷いて後に統合する」という内容の「韓米連合作戦計画五〇二七」が策定される。核問題の背後には、このような実に恐ろしいシナリオが描かれていた。

 戦争ぼっ発の一歩手前で、緊張した情勢を対話局面に転換させたのは、北韓の金日成主席と米国のカーター元大統領の会談であった。金・カーター会談を成功させたのは、金主席の絶大な指導力とカーター元大統領の賢明な判断力であっただろうと思う。

 しかし、ようやく第三次朝米会談が開かれ、南北首脳会談も準備されてまもなく開かれようとしていた矢先に、金主席が急病で亡くなるという不幸に見舞われた。金主席の死去は世界に大きな衝撃を与えた。金主席の死去に伴って、朝米会談や南北首脳会談の行方を心配する声が多い。

 だが、北韓の対内外政策は今後も従来と変りないと思う。北韓は金主席の生前の路線に従って、米国をはじめ西側諸国との関係改善や、南北関係の改善に積極的に取り組むことになろう。これに米国や韓国がどのように対応するかによって、今後の韓半島情勢はその明暗が分かれることになろう。いろいろな選択肢はあるだろうが、問題を解決出来る唯一の道は、話し合いによる方法しかない。南と北、米国に、対話路線の堅持を強く望むものである。

 日本に対してもひと言いわなければならない。日本は今世紀の初め、武力でわが祖国を占領し、約半世紀間も植民地として支配してきた。その結果、第二次大戦後、わが祖国は三八度線を境に南北に分断されることになった。韓半島分断の遠因をつくった日本は、わが国が分断された後は分断体制の維持に力を注ぎ、わが祖国の統一を妨害してきた。

 北韓の核問題についても、米国に追随しながら「国際協調」に便乗して巧みに北韓-米国、南北韓問の対立をあおり、「魚夫の利」を目指してきた。その渦中で、非自民連立政権が崩れ、村山首班の自・社・さきがけの連立政権が生まれた。政権党になった三党のうち、さきがけを除いた自社両党は、九〇年に朝鮮労働党との間で三党合同声明に署名した政党でもある。村山内閣が対韓半島政策でどのような展開を見せるかは、これからしだいに明らかになると思うが、政策の面で以前の政府とどこか異なるものがなければならない。そのような意味から、村山内閣に対して、分断体制維持というこれまでの日本政府の誤った政策を改めるよう促したい。

 さて、九〇年代も前半を終ろうとしている。わが民族にとって波乱に満ちた二十世紀も残り少なくなっている。国権の喪失から国土分断へと続いたわが民族の受難の歴史も、はや百年を数えることになる。一世妃にわたる悲運の歴史に終わりを告げ、統一祖国の新しい歴史を今世紀中に切り開かなければならない。そのため、南と北、海外のわが七千万同胞が固く団結し、統一に向けてさらに力強く前進することを切に願って止まない。

 日本語に翻訳される機会に原文を読み返したところ、新しい情勢資料に基づいて手を加えたい個所も少なくなかったが、それはみな枝葉に関する問題であり、本書で取り扱っている原論的で基本的問題に影響を与えることではないので、そのまま出版することにした。

 最後に、翻訳を受け持ってくれた金思澤、宋寅鎬、郭秀鎬同志らに感謝を述べたい。なお、日本語版の出版にあたって、柘植書房の西村祐紘社長には非常にお世話になった。心から謝意を表する次第である。

 一九九四年七月

                               郭 東儀

目次

 

 

発刊に際して

日本語版の発刊に際して

 

第一章 統一問題の認識と実践の出発点

 第一節 統一問題の性格

  統一問題に対する視角

  祖国統一の民族的性格

 第二節 統一の理念問題

  祖国統一と民族主義

  分断時代における韓国民族主義の再定立

  韓国民族主義に含まれる第三の道

第二章 わが民族は一つ、祖国も一つ

 第一節 民族異質化論とその問題点

  民族異質化論の系譜

  民族異質化論の問題点

 第二節 民族の同質性を規定する基本要素

  ヨーロッパの民族観への批判的考察

  民族概念の主体的理解

 第三節 民族と祖国

  体制優位論と民族優位論

  祖国は二つではありえない

第三章 再統一の民族史的当為性

 第一節 民族的統合の成立

  自主、自尊の歴史

  統一新羅の再評価、高麗建国の民族史的位置

  高麗建国以後の千年史、その基本特徴

 第二節 解放後の歴史、民族分断の時代

  民族分断の歴史的意味

  米国の軍政実施と統一中央政府樹立のための大衆闘争

  分断体制の樹立、統一運動と反独裁民主化運動の結合

  内外分裂主義勢力の「二つの韓国」政策、民主・統一運動の反米自主化運動との結合

 第三節 分断歳月の経過と統一への意志

  時間と分断、時間と統一

  燃えつづける統一への意志

第四章 再統一のための南北の接近と対話

 第一節 南北和解の障害物の除去

  政治的不信の解消

  軍事的対決の中止

  駐韓米軍の問題

 第二節 南北対話論

  討話と対決

  対話の目的と原則

  討話の主体と方式の問題

第五章 二つの体制、一つの国家

 第一節 祖国統一の基本原則

  自主の原則

  平和統一の原則

  民族大団結の原則

 第二節 連邦制統一

  祖国統一三大原則と連邦制

  連邦制批判に対する反論

 第三節 連邦制と中立化

  国際関係からみた韓半島の統一問題

  中立化論、昨日と今日

  連邦制統一と中立化の関連性

第六章 統一祖国の未来像

 第一節 統一国家の性格

  同家の結合方式

  連邦制統一国家の性格上の特徴

 第二節 統一国家の政策方向

  統一国家の機能

  統一国家の基本政策

 第三節 統一国家の思相・理念・体制問題

  統一国家の理念

  真の人間らしき社会

  連邦制統一国家の未来

 むすび 

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