【論説】キーワードは「実用主義」/経済回復への期待が重圧に

     李明博新政権の政策を展望する

 李明博氏は二十五日、韓国第十七代大統領に就任する。昨年末の大統領選挙で示された韓国民の民意は、景気の停滞と生活苦からくる経済的、社会的閉そく感からの脱却を、経済界出身の李氏の政策手腕に期待をかけたものだった。それは当然、経済と生活の安定のために、南北関係の和解と安定を大前提としているものだった。李氏への国民の期待は、過熱している。それは逆に、経済の回復、庶民生活の安定の実現への期待が裏切られたとき、民心の離反は加速度的になるだろう。輪郭が見えた李明博新政権の政策を展望してみる。

 李次期政権の特徴を一言で表す言葉が「実用主義」だ。

 李氏は一月十四日、新政府準備委員会(準備委員会)の大会議室で行った年頭記者会見で、「過去に束縛されず、現実を冷徹に直視して未来に向けた道を開くために、『和合のなかの変化』を遂げなければならない」と述べ、「つましく有能な政府をつくることが、李明博政権の最も重要な国政課題」と明らかにした。つまり、金大中―盧武鉉政権時代からの断絶を前面に掲げ、「小さな政府」を目指すということだ。

 これに基づいて準備委員会は一月十六日、統一部を廃止して外交通商部に吸収して「外交統一部」とし、金大中政権時代に新設された女性家族部を保険福祉部に統合して「家族福祉部」とするなど、現行の十八部四庁体制を十三部省二庁体制にする政府組織法改正案を明らかにした。この縮小案は、単純に「小さな政府」を目指したとはいいがたい側面がある。統一部は、南北の和解と協力事業を主管推進してきた部署であり、女性家族部は、一九八七年以来の民主化の流れのなかで、女性の社会進出と両性平等社会の実現を主管する部署で、平和と統一、社会の民主化に大きな成果をあげてきた。統一部は存続が大勢となったが、成果をあげた部署を廃止、あるいは権限・機能の縮小を行うということの意味をめぐって、少なくない人びとの懸念を呼んでいる。

 こうした方向性は、盧武鉉政権が取り組んできた歴史の見直し事業の打ち切りへと進む展望だ。準備委員会は、「親日反民族行為真相究明委員会」(存置期限〇八年十一月)、「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」(同〇八年十一月)、「軍不審死真相究明委員会」(同〇九年一月)、「真実和解のための過去事件整理委員会」(同一〇年四月)、「親日反民族行為者財産調査委員会」(同一〇年七月)を、存置期限切れをもって廃止とし、漸次縮小していくとしている。

 長く続いた軍事政権によって、抹殺された歴史の真実を明らかにし、評価を見直して過去を正しく清算することは、未来のために必ず行わなければならないことだ。そのために、上記委員会の存置期間は本来無期限にすべきだと多くの識者が指摘してきた。民主化の歴史の継承と、歴史の見直しは「実用主義」であってはならないとの声には、説得力がある。

 次期政権には経済の回復、安定した雇用への期待がかけられている。李氏は一日、東亜日報、朝日新聞などとの会見で、「規制緩和」を強調した。これが、キーワードだといえる。李氏は同会見で、大手企業の出資制限をはじめ、「さまざまな規制を国際基準まで緩和する」ことを再三強調した。また、経済発展の阻害要因に労使紛争をあげ、これも「規制緩和」するとした。一言でいうと、新自由主義的な政策を徹底するということだ。盧政権のもとでも、新自由主義政策で不安定な非正規職の増大と、格差の拡大がおこり、外国資本による重要産業の掌握が進んだ。李氏は会見で「外国企業の投資に対しても制限がないようにする」と明言したが、過去五年間の経験から、大企業と外国資本への過度な配慮をしめしたこうした政策への心配はつきないところだ。

 李氏は朝米関係の改善を背景に、基本的には金・盧政権が行ってきた対北政策を踏襲していくことを明らかにしている。とはいえここでも「実用主義」の特色を発揮し、十・四共同宣言で合意された事業に関して、@妥当性と経済性に関する検討A財政負担の能力と価値の算定B国民的合意――を推進の条件にあげた。一方で、「人権」「開放」など、北側が敏感に反応する問題も提起するとしている。

 南北関係と密接に関連する韓米日関係は、「修復」することを強調している。そのなかでも突出した感があるのは韓日関係だ。日本の歴史教科書わい曲問題や、小泉元首相の靖国神社参拝、独島(日本名竹島)問題など、歴史問題で韓日関係はギクシャクした。その原因は韓国側にあるのではなく、歴史をわい曲する日本の政治家や右派的な学者、マスコミの言動に原因していた。そして、その問題は根本的に解決していないのが実情だ。一日の会見で李氏が、「天皇の訪韓を歓迎する」と発言したことは、問題の正しい解決につながらず、歴史問題をうやむやにしてしまう可 能性も指摘されている。

 いずれにせよ、経済の再生という重い課題を背負って発足する李明博新政権が、民意の期待に答えてくれるよう願わずにいられない。

(禹英信記者)


 

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