「瞬間(とき)の曲がり角」

盧京子(ノ・キョンジャ)著

 

 筆者は、脳性マヒという重度の全身性障害とともに、この世に生を受けた。

 筆者との間には、ひとつの記憶がある。

 かって私には、寝たきりで言語表現を持たないいとこがいた(すでに他界)。15年程前、その彼について筆者に「彼を理解できない。彼の心が分からない」と私が嘆くと「彼とどれくらい会ったの?もっと触れてあげたら?そうすればもっと分かるよ」と答えた。その時の筆者の眼差しは優しく暖かかった。

 そんな筆者も、周囲の人間との摩擦やいさかいがひんぱんであった(おそらく現在も)。そのほとんどは、筆者の障害者としての自己主張を相手方が受け入れられなかったことによるものである。

 筆者は本書の全編を通じて、次のように訴えかける「私を人間のありのままに直視し、理解してほしい。何故そうしようとしないの?」

 世の中の人間の多くは憶病だ(私も含め)。自分の強さを人に認めさせようとはしても、自分の弱さや誤りを自ら認め受けいれることを恐れる。そうした人のあり様は、さらに弱き者を見下し排除する「殺しの思想」に自らを加担させていく。

 本書に綴られた筆者の生々しい体験は、そう私たちに警告する。

(鳥影社刊:1400円+税 本書は韓統連大阪本部でも取り扱っています。)

 

 

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