春の予感、朝鮮半島情勢

 

 昨年8月の朝鮮民主主義人民共和国(北韓)が発射した人工衛星がきっかけとなり、朝鮮半島情勢は一気に緊張が高まった。しかし、今年に入り状況は微妙に変化してきている。

 

●朝米高位級協議合意の意義

●朝日関係改善の動き

●戦争から平和へ、平和から統一へ

 

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●朝米高位級協議合意の意義

 3月18日、約半年間計4回にわたる高官協議の末、朝米の地下施設疑惑問題が遂に合意した。今回の合意に、日本のマスコミは「本質解決には程遠い」と冷やかであるが、はたしてそうであろうか。

 金倉里(クムチャンリ)地区の地下施設に対する疑惑が公表されたのは1998年8月初めで、8月31日に、北韓の人工衛星発射実験が行われるや、米国は「中距離ミサイル開発配備を推進している以上、核兵器開発も継続している」という口実のもと、北韓の軍事体制を探るために「北の脅威」を煽り、強く査察を要求した。

 相手を威嚇して(戦争の脅威で)有利な条件で合意をせまるという米国の常套外交は、今回も北韓には通用しなかった。交渉は何度も中断したが、最終的に米国は「複数回の査察(実質は2回の訪問)の見返りとして、60万トンの食糧支援と凍結されていた朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の一期分の拠出1500万ドル支援を履行することになった。

 さらに、より重要なのは、共同声明で94年10月のジュネーブ合意を再確認したということである。ジュネーブ合意が再び生き返るということは、米国の対北韓外交が、連絡事務所の設置から最終的には国交正常化までのロードマップ(外交的道筋)に基づいて展開していくことを意味する。

 当然、様々な紆余曲折は予想されるものの、朝米関係が本格的に関係改善に向けて動き出すことの意義は大きい。朝鮮半島情勢の舞台は、「戦争」から「平和」に変りつつある。

 

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●朝日関係改善の動き

 人工衛星発射実験(テポドンショック)がよほど大きかったのか、日本では「第2の朝鮮戦争」前夜を思わせるほどのパニックが引き起こされ、「偵察衛星の開発」「戦域ミサイル防衛(TMD)構想の参加」「新ガイドライン関連法案」など、長年の懸案事項を一気に進めている日本政府も、今年に入り、小渕首相、高村外相が北韓との交渉再開を呼びかけたり、状況は微妙に変化してきている。

 野中官房長官は、土井たか子社民党党首との会談で、北韓との関係改善に向けて、村山元首相を中心にした超党派の訪朝団の結成を提案し「この世紀が終わるまでに、この問題にかたをつけるべきだ」(2月13日)と述べ、さらに3月11日の記者会見では、「日朝間の水面下の接触は、あらゆる場所、時期を通じてやらなければならない。事柄の性格上、非公式な会談のすべてを否定しない」と北韓と非公式に接触していることを認めている。

 現在、まだまだ「北韓の脅威」の暴風が、おさまったといえる状況ではないが、以降、朝米関係の進展に伴い、それに遅れまいとして朝日関係が改善していくことは十分に予想される。

 実際、朝米合意後、ソウルを訪問した小渕首相は、北韓との「対話路線」を明言し、「拉致疑惑」への言及も「行方不明の状況」という表現に大きくトーンダウンしている。

 

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●戦争から平和へ、平和から統一へ

 南北関係も、大きな転換期にさしかかりつつある。

 昨年秋に始まった金剛山観光は大盛況であり、99年2月18日現在、2万7170名が訪問している。また、昨年1年間で直接北朝鮮を訪問した人も3317名で、過去9年間の合計2408人を大きく上回っている。

 韓国政府は3月、「条件なしに6月までに大韓赤十字社を通じて肥料10万トンを北に支援する」と発表した。昨年の条件付き支援とは大きな変化である。

 韓国の民間運動においても、在野運動団体の中軸である民主主義民族統一全国連合は、今春、執行部を一新し、今年の8月15日は、第10回汎民族大会を汎民連・韓総連とともに板門店で行う方針を決定した。加えて「国家保安法の撤廃」、韓統連の「反国家団体」規定解除にむけて全面的に取り組むことを宣言している。

 緊張に対する脅威、戦争への警鐘をならすと同時に、平和への動きをすばやく察し、その方向をより大きく広げていくことが大切だ。

 韓統連に対する「反国家団体」規定が解除され、私たちが堂々とソウルに入城する日は、意外と早く来るかもしれない。

 

 韓国の文化観光部は、2月9日開かれた国務会議で「漢字併用法案」を報告し、これを推進すると発表したと東亜日報が報道した。

 申楽均(シン・ナッキュン)文化観光部長官は、「伝統文化の伝承発展、漢字文化圏国家との交流と観光増大を期して、1948年に制定された<ハングル専用法>の範囲内で漢字併用を推進する」と表明し、当面観光客の利便のため道路表示を漢字併記し、公文書の混同しやすい人名・地名・歴史用語等に漢字を併記するとした。

 唐突な当局の発表は、韓国内でさまざまな議論を巻き起こしている。もとより、どのような文字を採用するかは、国の最重要政策のひとつである。また、「ハングル」は世界で最もすぐれた文字であると言われている。賛否両論それぞれに一理あり、にわかに決めかねる面がないでもない。しかし、建国以降50年以上継続されたハングル専用方針を、なぜ今変更しなければならないのだろうか。

 私たちの民族がいつ頃から漢字を使うようになったか、2月20日付けのハンギョレ新聞に掲載された論壇「源越と国の興亡」によれば「三国史記」に西暦372年、高句麗で広められたとある。以来、千六百年以上も漢字を使用してきたのだから漢字文化の蓄積は相当のものがあり、漢字を使った方が便利な面もある。例えば「防火」と「放火」は韓国語読みでは同じ「号鉢(パンファ)」となり、混同を避けるため漢字を併記するほうが便利だ。

 しかし1446年、世宗(セジョン)大王がハングルを制定したのは中国の影響を抑える意味が小さくなかったと思われる。また解放後は、民族の自主独立を鮮明にすべく「ハングル専用法」を成立させてまで、日帝植民地政策の残滓を一掃しようとした。このような先人たちの努力を今一度振り返ることが重要ではないだろうか。

 今、日本文化を無条件に開放し漢字併用を推進するのは、政策の一貫性を疑われるだけでなく新たな日本への“迎合”ではと疑いたくなる。2月11日開かれた韓日外相会談の席上日本の高村外務大臣は、「韓国と中国そして日本が使用する漢字が違うので、公式略字を定めるなら日本式にしてくれ」と冗談めかしで言ったと2月13日付朝鮮日報が報道している。また2月19日付け読売新聞の朝刊コラム欄に“ハングルの洪水に韓国を初めて訪れた大方の日本人が「ハングル酔い」になる”で始まる記事があった。漢字併記を歓迎する内容である。

 2月23日付け「世界日報」は漢字併記政策の発案者が、金鍾泌総理であると報道している。「韓日会談」を積極推進した徹底的「親日家」の彼の底意に、疑念を抱かずにはいられない。

 20年程前に、韓国の高校生は学校で漢字を習わないので漢字混用の新聞が読めないで社会問題になり、漸次新聞記事をハングルに置き換えるようになった。また新たな混乱が起きる可能性も否定できない。

このような民族の行く末に重大な影響をもたらす政策は、南だけでなく、ぜひとも南北共同の研究課題にしてもらいたいものだ。南と北の言葉使いに、今でも少なからぬ差異がある中で、南で漢字併用へ大きく政策転換するのは平和的統一の精神に反しはしないかと危惧される。

 

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