◆コラム◆

 「虚構の映像を越える現実の世界」

 「世界が熱狂、胸を打つロマンス、壮絶なアクション、ハリウッド映画に並んだ韓国新世代の英知の結晶…」。華々しい宣伝文句にあおられてか、映画「シュリ」は、日本で最も多くの人に見られた韓国映画となったそうだ。酷評の数々を聞くにつれ、「見るまでもない」とやり過ごしてきたが、先日、レンタルビデオ店にずらりとならんだ一本を手にした。最後まで見るのに相当な忍耐力を要したが、やはり、自分の目で見てみるものだ。

 なるほど、ど派手な銃撃戦と生々しい殺戮シーンは、ハリウッド映画をよく真似ている。これだけなら単なる二番せんじで終わるところだが、話題性を呼んだのは南北分断を舞台背景に設定しているところだ。ハリウッド映画が得意とする国際政治を背景としたアクション物は、東西冷戦時代の終結とともに、ソ連という絶好の悪役を失い、適当な材料に困り果てている。第3世界諸国の民族解放戦線などが「テロ集団」として時折、悪役に抜擢されるが、どうも役不足(?)の感がぬぐえない。そんなハリウッドの「苦悩」を横目に、この映画は、冷戦の孤島、祖国朝鮮半島を舞台に選び、ソ連に代わる格好の悪役に北朝鮮を採用した。映画の冒頭から描かれる残忍非情な北朝鮮の特殊部隊の姿を通して、見る者は、北朝鮮に対する敵対感情を当たり前のように受け入れていく。そして、その「悪役」に立ち向かう主人公は、CIAならぬ韓国秘密諜報機関員。ハリウッド映画に並んだもっとも大きな点は、反北意識をあおりながら悪名高い韓国情報部をヒーローに仕立てあげる大衆操作にあるのかもしれない。

 なんとも言えない後味の悪さをぬぐおうと、南北首脳会談のニュースビデオをもう一度見た。「シュリ」の観客動員数が、どんな記録を作ったにせよ、南北首脳会談の映像を見守った南北海外すべての同胞と世界の人々の数には、はるかに及ばない。人々は、和解と統一へと向かう朝鮮民族の姿をその真実の映像から見た。

 6・15南北共同宣言は、その第4項目で、南と北の各界各層が多角的に対話と協力を進めることをうたっている。南と北の映画人が、遠くない将来、祖国統一への巨大な胎動を南北合作映画として世界に発信する日を待とう。

(金 五)

 

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