◇在日同胞問題欄

「民族の誇りを持ち、新たな展望を開いていこう」

−韓統連中央本部 李義茂(イ・ウィム)社会局長に聞く−

聞き手:「自主」編集委員 崔誠一(チェ・ソンイル)

●はじめに

 今回、「自主」編集部では、韓統連中央本部・李義茂(イ・ウィム)社会局長から、日頃の社会局の活動、現在の在日同胞問題全般に対する考え、在日同胞の将来像などについて、お話を聞くことができました。
 今号では、そのインタビュー記事を掲載します。

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崔:韓統連中央本部で社会局を担当するようになった経緯についてお話してください。

李:91年の7月に韓青同中央本部から韓統連中央本部に移りました。そして、92年の3月から社会局を担当することになりました。

 その当時は、「慰安婦」問題などの戦後補償問題が社会的焦点になっていた時期で、韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会が日本を相手に訴訟を起こした時期でもありました。こうした中で、韓日の歴史清算問題、被害者の原状回復という人権問題に積極的に取り組むことになりました。また、在日同胞状況も世代交代の進行とともに、民族離れ−同化・帰化傾向が急速度に進むなどの深刻な状況を見せており、社会局を担当窓口として対応を取ることになりました。

 

崔:社会局の日常活動について紹介してください。

李:ひとつが在日同胞問題です。同胞の権益問題については、東京地域での同胞団体の動きはさほど活発ではないのですが、外登法、入管法などの法改正問題などでは、国会活動や請願、集会などで他の団体と協力しながら取り組みます。また、民族教育問題などでも、シンポジウムや学習会、交流会、行政交渉などに取り組みますが、残念ながら問題意識を持つ日本人の姿は多いのですが、在日同胞の姿は多くはありません。(民団、総連は独自に活動する)同胞自身の民族意識と権利意識を拡大することが重要です。現在、比較的に力を入れているのは、東京都が進めている「人権施策推進指針」(今年度中に策定)に在日同胞問題を民族差別と人権問題の観点から、正しく反映させようと努力しています。

 戦後補償問題では、同胞が原告となっている裁判への支援や、戦後補償を実現するため様々な取り組み(集会・シンポジウム)や真相究明などの活動を日本人とともに行っています。ただ、ここで重要なこととして、かつての日本の加害を問題とするだけでなく、被害国であるにも拘わらず、安保支援と交換に被害者及び民族的尊厳を切り捨てたままでいる韓国政府の責任と韓日条約の問題性を指摘することと、朝日交渉に消極的な日本政府の問題性も意識化するよう心がけています。

 

崔:現在の在日同胞問題全般について、どのようにお考えですか?

李:在日同胞の、とりわけ若年世代の「民族離れ」が深刻だといわれて久しいですね。事実、確実に世代交代は進んでいるし、日本国籍を取得する人も年間約1万人前後にのぼっていることと、国際結婚率が同胞同士の結婚率をはるかに上回り、国際結婚で生まれた子どもたちは、自動的に日本国籍となるなど、同胞社会全般が国籍においても意識においても日本社会に溶け込むような現象を見せていると思います。

 在日同胞は、このまま日本社会に溶け込み、特殊な歴史背景を持つ在日同胞という存在そのものが消滅してしまうのか、という極端な議論もあるようです。もちろん在日同胞が民族的な帰属問題などを選択するのは個人の自己決定権に属することですが、現状は自民族のルーツに誇りを持ち、それを堂々と表明しながら生活するのが「しんどい」と感じる意識と、そう意識させる日本社会の環境があり、それが過去と現在につながる日本と祖国とのねじれた関係からも影響を受けていることを無視できません。

 日本社会に「溶け込む」ことが「逃げ込む」ことならば、それは民族的な観点はもちろんのこと、人間的な観点からも「解放」されることではなく、自身においても周囲においても問題解決とは言い難いのは明らかです。

 問題はこうした重要な民族的な選択基準が、あまりにも一方的なマイナス材料ばかりが提供されているという環境を、同胞自身が改善していけるかどうかが重要だと思います。そのためには同胞社会が団結して、日本での法的・社会的なより良い環境を、また、祖国との前向きな関係を作り出すために努力することであり、子どもたちへの民族教育を熱心に取り組むことであると思います。

 在日同胞社会は一世の代から、困難な状況の中でも、血のにじむ努力を傾けてきた歴史があり、だからこそ解放後、半世紀を越えた現在も、在日同胞社会が存在し、そこから未来を展望できる素地を提供してくれているとも思います。世代交代や日本国籍所持者の増加という在日同胞社会の変化がありつつも、自己のルーツや民族的存在意識を積極的に発揮できる意識と環境が保障されるよう努力しなくてはならないと思います。

 これは韓統連をはじめ、同胞団体や同胞社会が、また現在を生きる私たち自身が常に意識しなくてはならない基本的で根本的な課題であり、責任ではないかと思います。

 

崔:石原都知事の妄言があり、世間を騒がせましたが、抗議活動など行なわれていましたら、紹介してください。

李:石原発言は、私たちを含めた在日外国人に対する度しがたい蔑視と敵視という彼のパーソナリティを露骨に表現したものですね。こうした誤った危険な考えの持ち主は決して少なくないと思いますが、問題は、彼が人や機関を発動させられる権力者であることと、議論が進行している治安管理―有事法制という危険な動きが背景にあるということです。

 私たちは、この件が報じられてすぐに、見過ごすことができない重大な問題だとして、韓統連・民主女性会・韓青同・学生協議会の4団体の連名で抗議文を作成、4月14日に石原東京都知事に抗議と謝罪要求の申し入れを行いました。こうした行動は、在日団体の中では、比較的早い対応となり、新聞・テレビのマスコミが取材して報道しました。

 その後は、大阪でも抗議集会が取り組まれたように、東京でも私たち以外にも波状的に抗議行動を続けています。

 

崔:ここ数年、日本のマスコミ(特に雑誌など)で、北朝鮮バッシングが何の根拠もなく行なわれています。そのことについてどうお考えですか?

李:国家や社会体制が自分たちと異なるからといって、あれだけ根拠のない(見た人から聞いたとか、マタ聞きしたとかの伝聞と脚色が多い)ことを書き、売り、危機感や蔑視感を煽ることがまかり通る日本社会とは、いったい何なのかと思いますね。

 これらのことがチマチョゴリへの暴行事件を引き起こす要因ともなり、差別を助長し、多くの同胞を傷つけ苦しめていることに怒りを感じますが、書き手、売り手にはそうした想像力があるのかどうか、確信犯的なバッシングが多いですね。

 こうした主張には、依然として冷戦思考を引きずるとともに、「朝鮮」に対する歴史的な蔑視観が根底にあると思いますし、また日本の国家政策にかかわる政治勢力の意向も反映しているのでしよう。わが民族との歴史清算を曖昧にしたままでいる日本政府の姿勢と態度が、こうした主張や「商売」を野放しにしていると思います。

 先の南北首脳会談が大きく報道され、北韓の情景が毎日のように映し出されましたが、テレビで、ある人が「今まで見聞きしてきた北朝鮮に関する情報はいったい何だったの、ずいぶんと違うじゃないの」と言っていました。南北首脳会談の成功は、大きくアジア、世界情勢に影響を与えていますが、日本のみが正しく対応できないのは、こうした旧態依然とした認識、独自の朝鮮半島政策の不在から来ていると思います。日本は内政、外交ともに「バッシング」で利を得ようとする傲慢で不遜な態度は、世界中から冷笑されることを認識するべきだと思います。

 

崔:最後に、在日同胞の将来について、何かイメージしていることはありますか。

李:南北首脳会談は、「統一時代」への希望の光を灯してくれたと思います。在日同胞は植民地支配と分断時代を、日本社会の激しい差別の中で生きぬいてきました。そうした中、日本社会にあって私たちが、とりわけ若年世代が正しく民族教育を受けないまま「自民族」を意識する場合、「負」のイメージを強く持つことしかできないのが現実でした。

 しかし、常にそうですが、今を生きる世代が自覚し、将来の責任を持とうとすれば、新しい展望を開くことができると思います。統一時代の流れが本流として進んでいけば、ルーツが南であれ北であれ民族的に団結できるだろうし、また日本国籍を持つ同胞も民族的なルーツに依拠しようとするなら、ともに民族的一体感をつくることができるでしよう。

 子どもたちに民族教育を保障し、自民族を隠す必要もなく生きていける、民族や社会に貢献できる道も広がる。そうした将来を展望したいですね。

 

崔:ありがとうございました。

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