◇在日同胞問題欄

在日同胞の参政権問題について考える

李徳三(イ・トクサム)

●はじめに

●問題の所在-何が問題なのか-

●参政権獲得要求運動の問題点

●今後の展望-あるべき在日同胞像-

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●はじめに

 去る1月21日、日本の国会に自由党と公明党が「永住外国人の選挙権付与法案」を提出している。

 この法案の骨子は、@地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を付与するものを永住者に限る。また当分の間、外国人登録原票の国籍の記載が国名により記載されていない者を除く。(これにより、朝鮮籍、無国籍者には選挙権は与えられない)A選挙権のみ付与し、被選挙権は認めない。B永住外国人であっても、当然に選挙権を付与されるのではなく、住所地の選挙管理委員会に申請し、選挙人名簿に登録することによって選挙権を行使する−となっている。

 日本という国は今、多民族共生社会に向かうのか、多民族帝国か、という分水嶺に立っていると言える。

 在日同胞をマイノリティーと見るのか、それとも南・北・海外の民族を一括りの運命共同体と見るのか、人によってその見方は様々だろう。

 ただ言えることは、分割して統治するというのが、いわゆる支配者の論理の常套手段であるということだ。その意味でこの法案は、祖国と在日同胞、在日同胞どうしを離問させようと言う意図があるということを見逃してはならない。

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●問題の所在-何が問題なのか-

 日本政府の対在日同胞政策の基調は、いわゆる同化・抑圧政策にある。そのことは、多くの民族学校を各種学校としてしか認めていないということに、如実に表れている。朝鮮学校を卒業しても高卒資格として認められず、進学を断念する在日同胞子弟も少なからずいたのだ。

 このような日本政府の同化・抑圧政策。そして、昨今の石原都知事の「三国人」発言に見られるような排外意識と相まって、帰化を選択する在日同胞が増えている。日本の当局の統計によれば、98年末、在日同胞の総数は52万8450人で、93年に比べれば約5万人が減少したことになる。帰化申請者は、年間約1万人と見られている。

 一方、本国政府は、在日同胞に対してどのような政策をとってきなのであろうか。それは民団系の民族学校が、全国(日本)で4校しかないという状況が明らかなように、やはり在日同胞を棄民化していると言わざるを得ない。

 これらの結果として、在日同胞の同化・帰化傾向が生み出されてきたのである。

 ところで、このような在日同胞の同化・帰化傾向に対して、参政権の獲得は、歯止めとなり得るのだろうか。答えは否である。また、実のところ、在日同胞の日本の全人口に占める比率は0.5%にすぎず、選挙権による影響力行使を過大評価することはできない。

 もちろん、下からの参政権獲得要求運動は、事の当否は別として、高次の権利として認められるべきであるとの主張は基本的に正しい。しかし、それが死活的に最優先の課題なのかというと疑問符がつく。問題は、在日同胞が、その民族性を保障させる施策、民族教育が不充分なところにある。

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●参政権要求運動の問題点

 参政権獲得要求運動は、どのような経緯で浮上してきたのであろうか。

 参政権要求をしている民団(在日韓国民団)の主張の根底には、いわゆる「定住性」がその根拠として捉えられている。民団の権益擁護運動の始まった1977年以来、一貫しているものである。民団の発行した差別白書第3集において、「民団主張の基本的な姿勢は、何よりも日本に定着するという前提である」としている。これは、在日同胞の権益擁護の課題を、定住の論理のみを打ち出すことで、祖国の分断を是認した韓日条約体制の枠内に抑え込む役割を果たしてきた。すなわち、日本帝国主義による朝鮮植民地統治によって存在せざるを得ない在日同胞の歴史的特殊性に言及しないということに基礎を置くということであった。

 これは、韓日条約において、かっての朝鮮植民地支配を「もはや無効」とし、「かっては合法である」としたことに対する在日権利問題への反映であった。

 参政権問題は、たとえそれが善意から出たものであったとしても、祖国と在日同胞を離間させ、在日同胞の民族意識の解体を促進する結果になることが憂慮される。結局、票田の開発という日本の政党の利害得失により、在日同胞の民族自主権が奪われることになるのではないか、ということである。

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●今後の展望-あるべき在日同胞像-

 日本という国は、今、多文化共生へと進むのであろうか。それとも多民族帝国へと進もうとしているのであろうか。

 昨年、日米新ガイドラインの策定にともなって、周辺事態法が制定された。日本は今、新たな侵略の道へ突き進んでおり、憲法第9条の廃止もにらんだ動きが強まっている。

 このような情況にともなって、在日同胞に対する排外主義が、石原東京都知事の発言にも見られるように強まってきている。

 外に対する侵略の強化は、内に向けては差別・抑圧の強化として現われる。それは、戦前の日本の情況にはっきりと表れている。関東大震災の際の朝鮮人虐殺は、その端的な例である。

 巷では、韓国ブームが盛り上がっている一方で、チマ・チョゴリを着て通学できないという在日同胞の現実もある。

 明らかに在日同胞は、二つに引き裂かれている。

 今回の「永住外国人の選挙権付与法案」では、このような流れにさらに拍車をかけるように、「朝鮮籍」の者は、対象から除外するとしている。これは明らかに在日同胞に対して分断を持ち込む以外の何ものでもない。

 だが、先の南北首脳会談開催合意に見られるように、緊張緩和が東アジアの潮流であり、このような動きは、その流れに逆行するものである。

 在日同胞の活路は、南・北・海外の同胞がひとつになること。すなわち、民族の統一の中でこそ、見出すことができるだろう。そして、その時、はじめて日本人と在日同胞との真の意味での共生が実現できるだろう。そのような平和なアジアの構築こそが、多民族帝国ではなく、多文化共生へと進む日本の道になるに違いない。

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