「二つのウリナラ(わが祖国)

 −21世紀の子供たちへ− 池田正枝 聞き手:川瀬俊治

解放出版社  1800円

 日本の植民地支配下にあった朝鮮で生まれ育ちソウルなどの小学校で教員をされ、敗戦後は八尾市の小学校教員として在日朝鮮人教育、同和教育などに尽力されてこられた池田正枝さんが、自伝となる「二つのウリナラ(わが祖国)」を出版した。

 池田さんは、ソウルでの教員時代に教え子を「女子勤労挺身隊」として富山の軍需工場に送り出したという反省から、かっての教え子にお詫びしたいという念にかられ91年に韓国を訪問する。そこで、45年ぶりに教え子との再会をはたす。

 しかし、やっと再会できた教え子と手紙のやり取りをはじめた矢先、教え子の家族から自分との文通を拒絶する手紙が送られてきた。

『母が元挺身隊であったことが周りに知れたら、私たち子どもは離婚しなければなりません』『先生に同情でない本当のお詫びの気持ちがあるなら、先生の国で個人的な次元でない国家的、歴史的な次元のお詫びの方法を考えて下さい』

 池田さんは、韓国の社会では元挺身隊であったことが日本軍「慰安婦」であったと受けとめられ、慰安婦に対する差別意識が強いことを知り、自らの行為への自責の念にかられた。

 植民地下での教師として、子どもたちにとって日本人になることが幸せ≠ニ信じて疑わず、同僚の朝鮮人教師に対して「女優さんのような名前をつければ」と創始改名を薦めることさえ行なった。植民地支配者としてあった自分の犯した罪として、池田さんは本書で切々と語りかけるように綴っている。

 「私を22年3ヵ月にわたって育てて下さった朝鮮。敬愛すべき地への限りない想いが私にすみついて、それをウリナラと呼ばずにおれなくさせます」

 在日朝鮮人教育、韓日連帯運動にも一貫して献身してこられた池田さんの人柄が伺える言葉であった。

 本書は池田さんの個人史であるが、植民地支配の実態についての歴史的な注釈が記されているので、韓日関係史を理解する上でも貴重な書となっている。

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